Root side
どことなく察して欲しくて会話を切り出した
デートの帰り際、家の中に入ろうとする彼女の手を
力強く掴んでじっと返答を待っていた
言われた瞬間どうしようもなくショックと同時に
抑えきれない怒りも込み上げてきた
誕生日を忘れられている、その程度の存在なんだって
僕はこんなにも想ってるのに彼女には想われてない
悲しさか怒りなのか分からないけど
目が潤んできちゃって、力無く掴んでいた手を離した
柄にも合わないことを言い捨てて袖で目元を乱暴に拭い
自分も家に向かって走り出した
日にちが変わったと同時に
ピコンピコン…と通知バーにどんどん表示される
「おめでと」のたくさん届く祝いの言葉な頬を緩んだ
だけど…まだあなたちゃんだけ送られてこなくて
何でもない冗談で笑ったり何気なく指先に触れる時に
どうしようもなく毎日懲りず好きになるのは
あなたちゃんだけなんだけど君は分かってくんない
莉犬の家で誕生日パーティーしてくれると聞いてたから
時間より早めに家を出たらドアを開けると
あなたちゃんが地面に額と膝をつき土下座をしていた
「謝ることじゃないから!」と慌てて駆け寄った
「”大好きな人”の誕生日なんだから!」と
顔を上げると嘘偽りない瞳で訴えかけられた
じゃあ何で…とポロッとこぼれた本音を口にすると
「煮るなり焼くなり好きにしてください…」と
反省した様子で何度も頭を下げるのを
あなたちゃんの両頬を手で挟み込んで止めた
どうぞ!と渡された一輪の向日葵の花
こんなの貰ったら…嬉しくなっちゃうじゃんバカ
ひまわりの花言葉、、、信じちゃうからね?
”貴方以上”は無いんだから
生涯その隣で何度も君とこの日を迎えれますように__
満面な笑顔が浮かんで目の前の小さな体を抱きしめた
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ひまわりの花言葉:あなただけを見つめる
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。