〈太宰宅〉
そう云った華楓は無理に笑って自室へと消えた
何があった?
森先生に何かを云われたか...
或いは...
ピーンポーン♪
と、インターホンの音が鳴り響く。
嗚呼、きっと蛞蝓だ。
中也の事だ
華楓の様子が気になって来たのだろう。
そう思い乍扉を開けると、案の定中也だった
恐らく知っていると思うが、反応を見る為に聞いた。
中也は無言で目を逸らす。
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首領執務室に呼ばれた華楓の体調が心配になり、
華楓の所へ向かっていた。
首領執務室前の廊下に着いた時だった___。
そこで見たのは涙を流している華楓の姿。
首領執務室の扉に背を向け、
声を押し殺して泣いていた。
執務室の前で警備をしている構成員は泣いている華楓にどう対応すべきか。と、ワタワタとしていた。
俺の声に気がついた華楓は、ハッとした様な素振りで俺を見る。
俺を呼ぶ彼奴の声は か細く、震えていた。
俺が華楓に駆け寄ると、華楓は助けを求めるかのように、俺にしがみついた。
華楓の紅色の瞳から零れる大粒の涙...
俺は華楓の様子から、この場から離れた方がいいと察し、自分の執務室で話を聞くことにした。
ふと 前に、太宰が云っていたのを思い出した
『華楓は、ポートマフィアの仕事を恐れている。
人を殺すことに抵抗を感じているんだと思う。
彼女は...本当は命を大切にしたいって思ってる。
心優しい唯の少女なんだ
その真っ白な心を 私達が汚してしまった...
私は...____其れを後悔している』
俺は、無言で華楓を抱き締めてやることしか
出来なかった。
その後、
華楓は「首領に命じられた任務へ行ってくる。」と、
去って行った
人を殺す任務へ
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太宰は華楓の部屋の扉を見つめ
そして、目を伏せた。
太宰は、「言葉を考えている」のだろう。
太宰は深刻そうに低いトーンで云った。
太宰は何時もの調子で「ふふっ...冗談だよ」と云った。
そう云って揶揄い乍俺の背中をグイグイと押して
退出を促す太宰
中也は顔を赤くして怒り乍部屋を出ていった。
はぁ...。と、息をつく太宰
太宰は意味深な言葉を呟く...
その言葉は誰にも聞かれることなく、
空間に吸い込まれていった..._____。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。