第52話

【九州編】9話『変化』
395
2024/01/26 21:00
臙脂 アズサ
臙脂 アズサ
会長…………?
穢れの前にいる人影。

私達には見せないような冷たい顔をした会長だった。

腕の中で持て余したペットボトルが、冷えきっていて、更に冷たさを伝えてくる。
こんなにも、会長の殺気で冷たい空気だと言うのに。
「グシャリ」という肉が潰れる音と、
「ぎゃあああ、」という途中で消える悲鳴。
会長が穢れを殺した方だけど、
別に会長があげた悲鳴では無いけれど、

いつまで経ってもこの悲鳴には慣れない。
昔、私が宵月に入ったばかりの頃、私に
      『臙脂は宵月、向いてないよ』
と言った人がいた。
その頃は、『ふざけるな』や『許さない』等なんやら毒を吐いて怒ったものだが、
最近になってその人が、よく、私を見ていた事に気が付いた。
    宵月はぶっちゃけ、私には合わない。

       人が日常的に死ぬのも、

    穢れの血と僅かな理性の悲鳴を聞くのも。
あの、月の瞬呉月でさえ、
一時期精神を殺られていた。

同じ時に入った華暦月は、
いつ精神が壊れてしまうのだろうか。
会長が後ろを振り返りそうになったところで、

私は反対方向へ走っていった。
礼央side
黒嶺 礼央
黒嶺 礼央
…誰かいるのか?
後ろを振り向くが誰もいない。
遠ざかっていく足音は聞こえる。

気配で人は特定出来ない。
俺が華暦月や玻翠月の様に、優秀な霊力探知が出来たら話は変わってくるが。
まぁ、一般人ならトラウマにならないことを祈るか。
最近、学園内での穢れ数が増えている。

元々この学園は宵月隊員が多いということもあり、霊力に釣られた穢れが発生しやすい環境にある。

だか、それを遥かに越すように数が増えているのだ。
黒嶺 礼央
黒嶺 礼央
さて…何が原因か
¿¿¿
お、黒嶺じゃ〜ん。
何してんの?w
黒嶺 礼央
黒嶺 礼央
…!
黒嶺 礼央
黒嶺 礼央
牌塚月…
牌塚 昏季
牌塚 昏季
やほ
服自体は体操着にパーカー。
校則破りはしていないため、問題はそこでは無い。
問題は顔周りだ。
首にはチョーカー、耳には大量のピアス。

一応生徒会本部として、規律の乱れを正すべきなのだが…上司と部下の関係なんだよなぁ……
牌塚が未だに校則を守らない1つの原因でもある。
牌塚 昏季
牌塚 昏季
…あー穢れの数?
黒嶺 礼央
黒嶺 礼央
はい、最近かなり多くて…
牌塚 昏季
牌塚 昏季
ふーん…
牌塚 昏季
牌塚 昏季
でもなぁ、
牌塚月が何だか不服そうな不思議そうな顔をする。
黒嶺 礼央
黒嶺 礼央
なんですか…
牌塚 昏季
牌塚 昏季
いや、青松院学園の周りに結界あるの分かるか?
黒嶺 礼央
黒嶺 礼央
あぁ、はい、まぁ存在は知ってます。
確かにあの結界…言われてみればある。
あれが張られた後は穢れの数がめっぽう減ったもので、楽になっていたのだが…
牌塚 昏季
牌塚 昏季
あれさ、華暦が張ったやつなんだよな
牌塚 昏季
牌塚 昏季
華暦は新参の月だけど、“才能の月”なんて言われるほど霊力の扱い方が上手い。
牌塚 昏季
牌塚 昏季
しかも最近華暦自身が大怪我をした…とか、霊力が乱れる事も無いし。
牌塚 昏季
牌塚 昏季
まぁアイツはいつも怪我ばっかするけど…優可哀想ーだな…w
ケラケラと笑う牌塚月。

華暦月の結界が安定していて、穢れは中に入る事が出来ない。
だとしたら考えられるのは…中から湧いている。
黒嶺 礼央
黒嶺 礼央
…………
牌塚 昏季
牌塚 昏季
ま、考え事頑張れよ〜
牌塚月はひらひらと手を振って、グラウンドの方に行ってしまった。

あれでも月。
という事がまだ信じられない、普通そこは協力するとこだろ…
黒嶺 礼央
黒嶺 礼央
まぁいいか、
今度仙嚢月や玻翠くんに、機会があったら相談しよう。

というか玻翠くんは既に気が付いていそうだが。
アズサside
臙脂 アズサ
臙脂 アズサ
ぁ、会長……
先程から十数分後。
いつもの会長が赤組の席へと戻ってきた。

けれど、先程見てしまったから、何だか気まずい。
黒嶺 礼央
黒嶺 礼央
…アズサくん体調でも悪いのか?
黒嶺 礼央
黒嶺 礼央
なんだか顔色が優れないが…
臙脂 アズサ
臙脂 アズサ
いえっ!全然平気です!!
そう言いながら掌の中のお弁当箱を握りしめる。

お昼休憩が終わったら、借り物競争なのに…
会長に対する恐怖がまだ少し残っていた。
黒嶺 礼央
黒嶺 礼央
そうか…
黒嶺 礼央
黒嶺 礼央
まぁ、何かあったら言ってくれ!
いつものように明るい笑顔。
臙脂 アズサ
臙脂 アズサ
はい…
多分、きっと、大丈夫。



この人の笑顔を見た時に、

この人が消えてしまいそうに見えるのは、


臙脂 アズサ
臙脂 アズサ
きっと気の所為よね…

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