バレンタイン当日。
教室に入った瞬間、
いつもと違う空気を感じた。
女子たちのテンションが、
明らかに高い。
あなたはカバンを抱えたまま、
そっと席に着いた。
中には、
昨日ラッピングした小さな箱。
――ある。
それだけで、
心臓が落ち着かなくなる。
サラが小走りで寄ってきた。
なぜかガッツポーズ。
その視線の先。
ライの机の周りには、
すでに女の子が集まっていた。
思わず声が漏れる。
ライは少し困った顔で、
でもちゃんと一人一人受け取っている。
でも。
ライの視線が、
ふっとこちらに向いた。
目が合う。
一瞬。
それだけなのに、
胸が跳ねる。
星川がにやにやする。
否定しながら、
心臓は正直だった。
昼休み。
わちゃわちゃしているうちに、
ライの周りが少し空いた。
背中を押されて、
一歩前に出る。
心臓がうるさい。
小さな箱を、
両手で差し出す。
一瞬、静かになる。
次の瞬間。
顔が、ぱっと明るくなる。
その言葉に、
胸の奥がふわっと温かくなる。
放課後。
帰り支度をしていると、
ライが声をかけてきた。
廊下を並んで歩く。
少し照れた笑顔。
夕焼けが、
二人の影を長く伸ばす。
手が、少しだけ触れる。
離れない。
笑いながら、
小さく頷いた。
バレンタインは、
ちゃんと甘くて。
ちゃんと幸せな一日だった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。