第121話

〔高橋恭平〕サボりの常習犯
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2020/12/08 07:44


コンコンッ



「しつれーしますっ!」



『…高橋くん、!どうしたん?具合悪い??』



「…んー、具合悪いっていうか、、。授業面倒くさくて?笑」



『もぉー、またサボり?いつも言ってるでしょ? 具合悪くないんやったら、ちゃんと授業受けなさい。』



「えー、ええやん!次の授業はちゃんと出るし!それに、あなた先生だって、ここに1人じゃつまらないやろ?」



『あのねー、つまらないも何も、そもそも私は仕事で…って、ちょっと高橋くん!聞いてるん!?』



「んー、聞いてる聞いてるー。」



『絶対聞いてないやんっ!、、はぁ…、もぉ、しょうがないな…。1時間だけだからね?』



「ふふっ、よっしゃ!!やっぱり、あなた先生ならそう言ってくれると思っててんっ!」



なんて、本当だったら今の時間は、授業中だっていうのに



保健室のベッドの上に寝そべって、嬉しそうにそう言っている高橋くん。



「あなたせーんせっ!先生もこっち、来て?」



『えっ、?何で?』



「えーからえーから!!はーやーくっ!そこ、座って?」



『うん、、?』



そんなに元気なら、授業受けれるんやない…?、なんて言葉は呑み込んで



とりあえず、訳もわからないまま、言われた通りに高橋くんが寝ているベッドの方へと近づけば…



「ふふっ、笑 ね、あなた先生、俺が寝るまでそこに居て?」



なんて、何かを企んでいるかのように、にやってしながらそう言う高橋くん。



『…何言ってるのっ!する訳ないやろっ!私だって、高橋くんのこと構ってられるほど、暇じゃないんですー!』



「えー、ちょっとくらいええやんっ!…なぁ、、あかん、、?」



『…っ、、。…わ、わかったからっ、! 高橋くんが寝るまで、ここに居ればええんやろ?』



「へへっ、うんっ!笑」



うるうるとした瞳で、そう言われては



教師として、生徒のお願いを聞いてあげない訳にもいかなくて。



自分でも、いつもの事ながら、少し高橋くんに甘すぎかな~とは思いつつ



結局、今日も私は、サボり常習犯の高橋くんに流されてしまって。



「…すぅ…、、すぅ……。」



10分くらい時間が経てば、聞こえてくる、規則正しい高橋くんの寝息。



気持ち良さそうに眠っている高橋くんの寝顔は、凄く綺麗で、目が離せなくて………



『…高橋くん、、……って、何言おうとしてるんやろ私、。ないない!絶対ないからっ…!高橋くんは生徒やし…っ!』



思わず自分の口から出かけた言葉に、自分が1番びっくりして。



これ以上ここにいると、何だか余計な事を言いかねない気がして



高橋くんが起きへんうちに、そぉ~っとベッドから離れようとすれば、、、




「あなた先生、どこ行くん?」



『えっ、…っ!?…わぁっ、!ちょっ、高橋くんっ!?』



ぐいっと、勢いよく後ろから高橋くんに腕を引っ張られて。



元いた場所に戻される所か、顔を上げれば、目の前にはドアップの高橋くんの顔。



『ねっ、高橋くん、離して…? 流石にこれはあかんって、、。』



「なんで? あ、もしかして、先生照れてるん?笑」



『なっ、違っ!そんな訳、!「んー、じゃあわかった!」



「あなた先生が、俺の事"恭平"って呼んでくれたら離してあげる!」



なんて、焦る私とは正反対に、何だか楽しそうにそう言う高橋くん。



だけど…



『…む、無理やって、!いつも言ってるやろ?生徒のこと下の名前で呼ぶとか有り得ないから、!』



「えー、じゃあ、、あなた先生。…さっき、何言おうとしてたん?」



『…っ、!?』



「俺の名前呼んで、何か言いかけてたやろ?」



『…っ、、なんで、、高橋くん寝てたんじゃ……。』



「残念。笑 最初からずーっと起きてましたー笑 …で、? 先生は何言おうとしてたん?」




優しく微笑みながら、私の顔を覗き込むようにそう言ってくる高橋くんは



……やっぱり、ずるい。



きっと、高橋くんは気付いてる。



そんな風に言われたら、私が断れないことも、……私の、気持ちにも。



でも、言える訳ない、、やろ?



高橋くんに、、生徒に。



"好き" だなんて。



言っちゃダメ、認めちゃダメ。



……って、そう思ってる時点で、本当はもう手遅れなのはわかってるけど



それでも、私は教師だから。間違いがあってはいけない立場だから、、、。




「あなた先生。」



『…ダメ…、ダメだってば、、高橋くん、、。』




"恭平" なんて呼んでしまえば、自分の気持ちが抑えきれなくなることは、明らかで。



だからこそ、何としてでも、自分の気持ちは誤魔化して



高橋くんの気持ちにだって、…気付いていないフリをしなくちゃいけないはずなのに、、、



「なぁ、あなた先生。もうええやん、いい加減認めたって。俺は好きやで? あなた先生のこと。」



『……っ、!、、。 …ダメなものは、ダメだもんっ、。』



「はぁ…、、もぉー!! あなた先生、ちょっとこっち向いて。」



『えっ、?……っ!?、待っ、!…んっ、、。』



顔を上げてみれば、唇に当たる柔らかい感触。



私だって、そこまでバカじゃあるまいし、これがどういう事かくらい、すぐわかる。




『……バカっ、、。…何やって、、。』



「へへっ、笑 ええやん "キス" ぐらい! どうせ減る訳やないんやし?笑 これからいくらでもするんやしっ!」



『…なっ、! 別に私は、、高橋くんのことが好きだなんて一言も…!!』



「言ってなくても、顔に書いてあるもんっ。笑 俺のこと、めっちゃ好きや~って、笑」



『~~っ、、!…だからそれは、!高橋くんの勘違いで、、!』



「もぉー、素直じゃないな~、あなた先生は。笑」



『…っ!!?…ねっ、待って高橋く、!』




「あなた先生、…好き。俺年下やし、まだ子供やし。頼りないかもしれへんけど、、でも、絶対…!先生のこと、幸せにするから。」



「…だから、先生。俺と、付き合って下さい!!」




なんて、ぎゅっと私の事を抱きしめながら、真っ直ぐに気持ちを伝えてくれる、高橋くんにも



…自分にも。これ以上は、嘘をつくことなんて出来なくて。



『…私、年上のくせに、小さい事とかすぐ気にするし。付き合ったら絶対、面倒くさいよ…?』



「うんっ。笑 」



『教師なのに、生徒のこと好きになっちゃうぐらいバカやし、アホやし…、本当にそれでも私でええの、、?』



「ええに決まってるやんっ。俺は、ぜーったいあなた先生がえーのっ!」



私も、自分の気持ちを伝えれば



高橋くんは、飛びっきりの笑顔で答えてくれて。



「ふふっ、笑 あなた先生、大好きっ!!」



これでもかってぐらい、ぎゅーってしながら無邪気にそう言う高橋くんは



やっぱり、私が好きな高橋くんでしかなくて。



『…うんっ、笑 私も大好きだよ、、"恭平"くん。』



「…っ!?!?、えっ、えっ!? 今、好きって、恭平って…!! …あなた先生、もう1回!!」



『もう言いませーん笑 ほら、高橋くん。そろそろ次の授業始まるよ? 早く教室戻らないとっ!』



「えー、やっぱりもう1時間、!『ダーメ! 1時間だけって約束したやろ?』



「…むぅっ、先生のケチっ…。、、じゃあ、わかった。」



『えっ、?……っ、!!…んっ、、。』



ニヤッと微笑む"恭平くん"。



少し油断をしていれば、もう一度。今度はさっきよりも、甘くて、優しいキスをされて。




「よしっ、充電完了っ!じゃあ、授業終わったらまた来るから。…ちゃんと、お仕事しといてや?笑 あなたせーんせっ!」



『~~っ…!!!』




なんて、私の反応を楽しむようにそう言って、嬉しそうに恭平くんは教室へと向かっていって。




『…ほんまに、、もぉ、、。笑 』




年下のくせに、私よりも1枚上手で、生意気で。



成績良くないくせに授業はすぐサボるし、教師の私からしたら、どうしようもないくらいの問題児で。




だけど……




『……好きだ、バーカっ。』




そんな恭平くんのことが、どうしようもないぐらい大好きな私は



……きっと。彼以上に、"バカ" だったのかもしれへんな。笑






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