賑やかなパーティー会場から抜け出し、
夜の静かな中庭のベンチに腰かける。
知り合いも少ないし、パートナーも居ない。
ただ子爵令嬢としての
最低限の社交辞令のようなもの。
私がいてもいなくてもパーティーに何ら影響がない
びっ…くりした、
背後からいきなり現れたのは
王宮騎士の制服をまとった、背の高い男性だった
横へずれ、十分なスペースを空けたあと
彼はすっと腰を下ろした。
また嫌味を言われるんじゃないか、そう思って
彼の言葉を遮るように声を出した
彼の言葉を聞くたびに謎が増えた
ただその掴めなさが面白いとさえ感じた
ショウさんが首をこてん、と傾げると
きれいな紫色の髪がサラサラと流れ落ちた
少しずつ会話を重ねるごとに
ショウさんの人となりがなんとなくわかってきた
丁寧な口調とは裏腹に、
意外と大雑把で大胆なところがあって
冗談やいたずらをよくする。
ショウさんが戻るまで
妙な寂しさが私を包んだ
今までひとりぼっちなんて慣れっこだったのに
早く戻ってこないかな、なんて中庭の入り口を
チラチラと覗くばかりだった
…ショウさんの声?
それはすぐ近くで聞こえた。
聞いたことがないくらい声を張っているショウさん。
誰かとトラブルになってる?
そうして中庭に入ってきたのは
予想通り、…少し髪が乱れたショウさんだった。
小柳さん、ショウさんはただの知り合い
としか言わなかったけど
きっとすごく仲が良いんだろうな
喧嘩するほど仲がいい…みたいな
ショウさんは頭のあちこちを手で探るも
全くかすりもしなかった。
くっと屈んで頭を差し出される
シャンパンを片手に足を組んで座る姿は
とても様になっていた。
彼がどんな人か、
どんな身分かなんて知らないけれど
その曖昧さがむしろ心地よかった
空になったグラスを置き、
立ち上がって伸びをするショウさんに釣られて
私も一緒に立ち上がった。
今まで座っていたから気が付かなかったけど
ショウさん、かなり背が高い。
すっと差し出された手を、
迷うことなく受け入れた
少し強張っていた表情が緩み
美術品のように綺麗な笑顔が現れる
二人だけの中庭に
静かなステップが鳴った












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。