第20話

 ✧ Shall we dance? ✧
75
2026/04/11 11:00 更新




 賑やかなパーティー会場から抜け出し、
 夜の静かな中庭のベンチに腰かける。

 知り合いも少ないし、パートナーも居ない。

 ただ子爵令嬢としての
 最低限の社交辞令のようなもの。

 私がいてもいなくてもパーティーに何ら影響がない


あなた
…はぁ、

…ため息なんて、どうされました?
よろしければ隣に座っても?


 びっ…くりした、

 背後からいきなり現れたのは
 王宮騎士の制服をまとった、背の高い男性だった


あなた
ぁ…はい、
ありがとうごさいます


 横へずれ、十分なスペースを空けたあと
 彼はすっと腰を下ろした。


ご令嬢はどうしてこちらに?
パーティーはまだ始まったばかりですよ

あなた
その…知り合いが少なくて
あなた
会場にいたってしょうがないと思って
ほう…それは


 また嫌味を言われるんじゃないか、そう思って
 彼の言葉を遮るように声を出した

あなた
あ、あのっ…騎士さんこそ、どうしてここに…?
…騎士?あぁ…これは知り合いに借りただけです
ほんとは騎士なんてやってないんですよ

俺も似たような理由です、パーティーってつまらなくないですか?


 彼の言葉を聞くたびに謎が増えた
 ただその掴めなさが面白いとさえ感じた


あなた
そう、ですね
あなたのお名前は?
あなた
…あなたのカタカナと申します
hsrb
あなたのカタカナさん、…俺はショウです
hsrb
まだパーティーも長いですし、もう少しここにいてもいいですか?

 ショウさんが首をこてん、と傾げると
 きれいな紫色の髪がサラサラと流れ落ちた

あなた
いいですよ



hsrb
あ、そうそう…小柳くんって言うんですよ
hsrb
この制服は彼のロッカーから引っ張り出して来ました
あなた
…それって怒られません?
hsrb
…ははっ、まあやってしまったことは変えられませんから


 少しずつ会話を重ねるごとに
 ショウさんの人となりがなんとなくわかってきた

 丁寧な口調とは裏腹に、
 意外と大雑把で大胆なところがあって
 冗談やいたずらをよくする。


hsrb
あ、止まってください
hsrb
…はい、風で葉っぱが飛んできたみたいです
あなた
ありがとうごさいます…

hsrb
喉渇きました、シャンパンでも持って来ましょうか
hsrb
あなたのカタカナさんは成人してます?あ、これもしかして失礼か
あなた
いえ…全然、それが成人はまだなのでお気になさらず
hsrb
はーい、すぐに戻ってきますね


 ショウさんが戻るまで
 妙な寂しさが私を包んだ

 今までひとりぼっちなんて慣れっこだったのに

 早く戻ってこないかな、なんて中庭の入り口を
 チラチラと覗くばかりだった


hsrb
ごめんて!!
お前まじで…ッ絶対許さん!


 …ショウさんの声?

 それはすぐ近くで聞こえた。
 聞いたことがないくらい声を張っているショウさん。
 誰かとトラブルになってる?


新品にして返せよ絶対な?
hsrb
はーいわかったわかった


 そうして中庭に入ってきたのは
 予想通り、…少し髪が乱れたショウさんだった。


hsrb
あー酷い目に遭った
あなた
どうされたんですか…?
hsrb
小柳くんに怒られちゃいました
hsrb
怖いんですよーあの人


 小柳さん、ショウさんはただの知り合い
 としか言わなかったけど
 きっとすごく仲が良いんだろうな

 喧嘩するほど仲がいい…みたいな


あなた
楽しそうですね、
あなた
ぁ…ショウさん、ここに葉っぱが
hsrb
え?どこ?
あなた
もう少し右、…あ違う反対です
hsrb
…ごめん全然わかんない、取ってくれる?


 ショウさんは頭のあちこちを手で探るも
 全くかすりもしなかった。

 くっと屈んで頭を差し出される


あなた
…はい、取れました
hsrb
わーありがとうございます


 シャンパンを片手に足を組んで座る姿は
 とても様になっていた。

 彼がどんな人か、
 どんな身分かなんて知らないけれど

 その曖昧さがむしろ心地よかった


hsrb
あー…パーティーももうすぐ終わりますね
あなた
そう…ですね、あっという間でした


 空になったグラスを置き、
 立ち上がって伸びをするショウさんに釣られて
 私も一緒に立ち上がった。

 今まで座っていたから気が付かなかったけど
 ショウさん、かなり背が高い。


hsrb
最後に…お願いいいですか?
あなた
はい、何でしょう

hsrb
俺とダンス、してくれません?


 すっと差し出された手を、
 迷うことなく受け入れた


あなた
もちろんです、
hsrb
…よかった


 少し強張っていた表情が緩み
 美術品のように綺麗な笑顔が現れる

 二人だけの中庭に
 静かなステップが鳴った




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