- Geto side -
窓から差し込む光。
薬品の匂い。
鳥の囀り。
いつもと違う天井。
壁に掛かった時計を見れば7時前。
随分と寝ていたようだ。
脇腹に感じた重み。
ベッドに突っ伏して眠る愛しい人。
乱れた髪を掬う。
そうか…
来てくれたんだな…
久しぶりに触れることが出来た君。
只々嬉しくて、自然と口元が緩む。
髪を撫で続けていると、その違和感に気付くように勢いよく面が上がった。
そして、直ぐに私を見た。
少し痩せた頬を包み込めば、途端にあなたの下瞼に涙溜まり出した。
ベッド上の私に、覆い被さるように抱きつく。
私もその華奢な身体をそっと抱き締め返した。
首元に顔を埋めて泣くあなた。
胸が締め付けられて痛くなる。
私を見ながら、溜まった感情を吐き出す。
涙でぐちゃぐちゃになったその顔。
鼻水も出てる。
思わず、笑ってしまった。
こんなにも一生懸命な君。
愛しく堪らない。
君はいつも__
欲しい言葉を全てくれる。
指で涙を拭って、両頬を手で覆う。
顔を引き寄せて、そっと唇を重ねた。
それだけで、身体が自然と軽くなった。
悟の言う通り、ただの欠乏症なんだ。
コクコクと頭を縦に振り続ける。
うん。
最初から、分かってたよ。
恵も__
小さい頃から見てきたし、そんな奴じゃない。
あなたも__
誘惑するような人間じゃない。
そう言えば、簡単に頬を赤らめる。
上半身を起こして、太ももあたりの掛け布団をポンポン叩く。
少し考えて、躊躇するあなた。
何となく意図を感じ取ったのか、履いていた靴を脱いでベッドに上がる。
私の足を跨いで、膝立ちする。
私より高い位置にある顔。
いつもと視界が逆だ。
恥ずかしそうに私を見下ろしている。
臀部に手を回して引き寄せる。
首を上に伸ばして、あなたに口付けた。
久しぶりの君を唇が求めて仕方がない。
貪るように舌を絡め合う。
銀糸を引いて唇が離れる。
上目遣いでお願いすれば、あなたが困ったように顔を真っ赤にした。
射るようにあなたを見つめる。
あなたの瞳__
熱を持ってるのが分かる。
きっと、身体はもう私に反応してしまっている。
君は言葉だけで、濡れてしまうからね。
気にしているようだから__
小型の呪霊を飛ばして、病室の鍵を掛けさせた。
それに__
皆もこうなる事を承知の上さ。
恵にもマウントを取ったが__
ここから先は、私だけが知るあなただ。
恥じらう表情も、
疼く表情も、
本当は抱いて欲しいのに誤魔化す表情も、
全部、全部__
私のものだ。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。