『まもなく丸和町、丸和町です。お出口は右側です』
車内アナウンスの後、徐々に電車の速度が遅くなりやがて止まった。
ドアが開いて数人が乗り降りするのを視界の端で見た。
乗り込んできた一人の男性が向かいのシートに座る。
いつもならわざわざ相手を見るなんて事はしなかった。
それでも、今日だけは無性に気になった。
まるで惹きつけられるように紗里奈は顔を上げて相手を見た。
その瞬間、心臓に強い衝撃を感じた。
藍色のスーツ姿にどこかあどけなさを感じる表情、伏し目がちな目、向かいに座るその男性に紗里奈は目を奪われた。
年齢はおそらく彼女よりも歳上であるが、さほど離れていないようだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。