第55話

💜壊れる前に
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2025/11/24 15:00 更新






仕事場にいるはずなのに、

手が震えた。

彫るはずの線が、うまく描けない。

針を持つ指先が冷たくて、汗で滑る。



jk「……なんだこれ」



息が詰まるように感じて、

胸がぎゅっと締めつけられた。

呼吸を整えようとしても、

空気がうまく入ってこない。



パニックだった。

何の前触れもなく、急に、

心が押しつぶされそうになった。



心の奥で、恐怖が芽生えた。

___このままテヒョンと

一緒にいたら、俺は壊れてしまう。

あの日、彼が店を辞めたのは、

この恐怖からだったのかもしれない。



手元の針を落とす。

空気を吸い込むけど、胸が痛い。

社員が声をかけてくれるけど、

言葉は届かない。



気づけば、救急車の中だった。

パニックと過呼吸で、

俺は病院へ運ばれる。

車の中でも、

心臓が暴れるように動いて、

呼吸が追いつかない。



病院に着くと、医師や看護師が

手際よく対応してくれる。

でも、俺は冷静だった。



…自分で、治す。



そう決めた。



診察室で医師に相談し、

自ら精神科への任意入院を選んだ。

ここなら、

自分の心の整理ができる___

壊れそうな自分を、

少しだけ守れる気がした。



ベッドに横たわり、

窓の外の空を見上げる。

青い空は、遠くて、美しくて、

でも、今の俺には手が届かない。



スマホに手を伸ばす。

テヒョンに連絡したいけれど、できない。

“離れてよかったんだ”と

自分に言い聞かせる。

でも、心の奥で、

まだ彼を求めている自分もいる。



この先、どれだけ

時間がかかるかはわからない。

ただ一つだけわかるのは___

俺は壊れる前に、

ちゃんと立ち直らなきゃいけない。



テヒョンの存在が、

嬉しくて、愛しくて、

でも___

同時に、俺を追い詰める。



それが、俺の今の現実だった。






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