仕事場にいるはずなのに、
手が震えた。
彫るはずの線が、うまく描けない。
針を持つ指先が冷たくて、汗で滑る。
jk「……なんだこれ」
息が詰まるように感じて、
胸がぎゅっと締めつけられた。
呼吸を整えようとしても、
空気がうまく入ってこない。
パニックだった。
何の前触れもなく、急に、
心が押しつぶされそうになった。
心の奥で、恐怖が芽生えた。
___このままテヒョンと
一緒にいたら、俺は壊れてしまう。
あの日、彼が店を辞めたのは、
この恐怖からだったのかもしれない。
手元の針を落とす。
空気を吸い込むけど、胸が痛い。
社員が声をかけてくれるけど、
言葉は届かない。
気づけば、救急車の中だった。
パニックと過呼吸で、
俺は病院へ運ばれる。
車の中でも、
心臓が暴れるように動いて、
呼吸が追いつかない。
病院に着くと、医師や看護師が
手際よく対応してくれる。
でも、俺は冷静だった。
…自分で、治す。
そう決めた。
診察室で医師に相談し、
自ら精神科への任意入院を選んだ。
ここなら、
自分の心の整理ができる___
壊れそうな自分を、
少しだけ守れる気がした。
ベッドに横たわり、
窓の外の空を見上げる。
青い空は、遠くて、美しくて、
でも、今の俺には手が届かない。
スマホに手を伸ばす。
テヒョンに連絡したいけれど、できない。
“離れてよかったんだ”と
自分に言い聞かせる。
でも、心の奥で、
まだ彼を求めている自分もいる。
この先、どれだけ
時間がかかるかはわからない。
ただ一つだけわかるのは___
俺は壊れる前に、
ちゃんと立ち直らなきゃいけない。
テヒョンの存在が、
嬉しくて、愛しくて、
でも___
同時に、俺を追い詰める。
それが、俺の今の現実だった。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。