第6話

5 ミヒャエル
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2025/04/23 12:00 更新














あなた
甘いものは好き?


図書館を去り、二人で街中をぶらぶらと

散歩している時、ふと彼にそう質問した。
ミヒャエル・カイザー
え…いきなり、


案の定、彼は少し驚いた顔を見せつつも

質問に対する回答について熟考しているようだった。
ミヒャエル・カイザー
…甘いものは高いからあんまり食べたことがないんだ
あなた
そっか


確かに、私自身もそこまで頻繁に食べている訳では無い。

スラム育ちにそう言われてしまえば

どうとも返す言葉がない。
あなた
じゃ、今日挑戦してみようよ
ミヒャエル・カイザー
え?






ーーー




ミヒャエル・カイザー
プレッツェル…✨️


ハートのような形をした焼き菓子パンを両手で

持ち、俄然興味を示しているように見えた。
あなた
ドイツ発祥の食べ物なのに
食べたことがないだなんて…


私は、大抵の事はなんでもひとりで

乗り越えてきて、

それなりに充実していて、

安定した生活を手にしていたために、

今目の前にいる自分より,,不幸,,な人間への

配慮と考えが行き届いていなかったみたいだ。



にしても、プレッツェルを食べたことが

ないだなんて

一生分の損をしているな。

基本的に甘さのないプレッツェルなら

甘いものが苦手な私でも

気兼ねなく口にすることが出来るし、

味付けによって甘味の具合も変わってくるから

自分の好みに合わせやすい。




そう思考を巡らせていて気にもとめなかったが

彼が、一口も食べずに俯いていることに

たった今気がついた。



『どうしたの?』と尋ねると、

彼は恐る恐る声を発した。
ミヒャエル・カイザー
…俺、、
ミヒャエル・カイザー
俺、あなたに合わなかったら……

私は彼の言葉を遮り、自身の言葉を述べる。
あなた
そーゆー事は考えるもんじゃないよ
あなた
……いま、私達は一緒にいるんだから


もしも、という非現実のことではなく、

いま、という現実のことに目を向けよう。

きっと、そうするべきである。
ミヒャエル・カイザー
…うん✨️
ミヒャエル・カイザー
あなた好き!


私の胸元に両手を広げて飛び込んできた彼は

ぐりぐりと自身の頭を押し付けてきた。
あなた
私も好きだよ


彼の甘えに答えるように

左手で彼の背中を支え、

右手で彼の頭を小さく撫でた。




ーーー
ミヒャエル・カイザー
楽しかったなぁ……
         にっこりと笑い、満足そうに大股で歩く彼は

やはりまだまだ可愛げがある

小さな子であった。
あなた
…それは良かった
あなた
甘いものは?
ミヒャエル・カイザー
おいしかった!!
あなた
…ふふっ

無邪気な彼を見ていると、こっちまで

晴れやかな気持ちになってくる。












少しの沈黙の後、

彼は少し震えた声で新たな話題を切り出した。



ミヒャエル・カイザー
……あなたは…これからどこに住むの?


この子……本当に可愛いな((

すぐ表情が変わる。


ついさっきまでは

あんなに幸せそうだったのに

今は俯いて小刻みに肩を揺らしている。
あなた
…
あなた
……お兄様は……異臭がするし…
虫さんの標的の的だから…
ミヒャエル・カイザー
…?
あなた
……ちょっと離れたところに住むよ


日が沈みつつあり、私たちに赤色の陽射しが

差し掛かる。

宛も行先もない、ましてや帰る家もない私は

明日に希望を抱くように目の前の夕日に

視線を向けた。
ミヒャエル・カイザー
会えなくなるの?


彼に服の袖部分を弱々しく引っ張られる。

彼の瞳を見るとその目には哀愁のようなものが

ぐるぐると渦巻いているように見えた。


真っ直ぐすぎる視線に少し冷静さを欠き、

僅かにうろたえてしまった。
あなた
…ううん、それはないよ
あなた
会いに来るから
ミヒャエル・カイザー
…


きっと今彼は、彼なりに私に

気を使わせないようにするために

どうしたらいいかを思考し

整理しているのだろうな。







あなた
『俺がそっちに行く』なんて
考えちゃダメだよ
          明らかに視線が泳いでいた。

まだまだ自分の本心を隠しきれていない。

まぁそんなところに幼さと愛くるしさを

感じた。
あなた
私が君を助ける
あなた
君を育てて、スラムから出ていってもらう


私は路地の真ん中で中腰になり、

彼と目線を合わせて頭を撫でた。
ミヒャエル・カイザー
……あなたは?
あなた
私は大丈夫だよ
あなた
正直ここでの生活はクソだけど、多分ここから
出ていったら人間ヤバいほど居るだろうし

昔から大勢が集まる場所では人酔いによって

頭が正常に回らなくなってしまうから

好きじゃないしね。
ミヒャエル・カイザー
あなたがでていかないなら
俺も出ていかない!!

頭を撫でていた私の手を弾き、

反抗の意を私に確かに示す。
あなた
きっと君ももう少し大きくなったら
事の重大さに気づけるようになるよ
ミヒャエル・カイザー
あなたっ!!!
あなた
,,ミヒャエル,,
ミヒャエル・カイザー
っ!






















































あなた
私は……身内を殺したんだ…

















目を見開いていた。

開いた口が塞がらないっていうのは、

きっとこういう境遇に出会った

人間が作ったんだろうな。



微かに唇が震えていた。

額にうっすらと冷や汗も見えていた。






,,そりゃぁそうか,,
ミヒャエル・カイザー
っ…ここじゃ、そんなの日常だろ?
あなた
いいや、確かにここじゃ罪が
問われることは無いけれど
あなた
過去の経歴としてしっかりと君の枷となる
ミヒャエル・カイザー
ッ、別にどうだってッ!!
あなた
私といると、君も人殺しに加担したと思われる
あなた
避けることの出来る問題は避けて生きるべきだ
ミヒャエル・カイザー
ッ…!でもッッ!!!




続きの言葉を待ったが、

その言葉が紡がれることは無かった。






あなた
……どうか……わかって欲しい












































ミヒャエル・カイザー
…っ……(コクッ


あなた
……ありがとう



彼の目には大粒の涙が溜まっていた。

口は強く結ばれ、鼻先と瞳の周りが

薄く紅色に染っていた。





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