あなたside
時刻は午後3時。
あと1時間くらいで亮平にぃが帰ってくる。
痛い……頭ガンガンする……
ソファーに座り、薬を飲んだ。
しばらくすると、痛みが抑えられてきた。
ふと目にお母さんの写真が入ってきた。
お母さんを兄弟みんなで囲んで、笑顔で笑ってる様子。
その中には……亮平にぃも笑顔でピースをしている。
……あの頃に……戻りたい……
回想 10年前
こうやってみんなで笑い合うのも。
ドタバタドタバタ
亮平にぃは布団にくるまって泣いていた。
……まさかこれが正夢になるなんて、思ってもいなかった。
そう言ってたのに……
この時までは、確かに亮平にぃも愛されていた。
……にぃに達が変わったのは、お母さんが死んでからだった。
ある日の散歩中 (あなたが5歳の時)
私と亮平にぃは一目散に走り出した。
お母さんも笑いながらもいつも付き合ってくれた。
それなのに……急に……急に……!!
突然お母さんが胸を抑え始めた。
でもその時、私は……トイレに行っていて、そのことに気づけなかった。
私がトイレから出てきた時には、もうすぐ救急車が着く頃だった。
私はその時パニックになって、正常な思考回路ではなかった。
そう言って亮平にぃは必死に私をあやしてくれた。
辛いはず……怖いはずなのに笑顔まで見せてくれた。
でも、お母さんは助からなかった。
その日から、亮平にぃに対する態度は一変した。
亮平が「〇〇にぃ」と呼ぶことすら嫌った。
にぃに達からすると……
もっと亮平にぃが早く助けを求めていたら、お母さんは助かった
らしい……
そんなの……分からないじゃん……
亮平にぃは悪くないのに……なんで……なんで……?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!