次の日。朝起きてみると、彼女はとっくに目覚めていた。
昨日のことがあったからかマオはどことなくそっけなかった。
ただ、気丈なその雰囲気はいつものそれだった。
ふとテーブルを見ると、マオが作ってくれたという朝御飯が並んでいる。
向かい合うように置かれた二人ぶんの朝ごはんを見て、僕は急に申し訳なくなった。
あんなことがあった翌日に、なんでマオに作らせてしまったんだ。
気分を落とした僕に気を使ってくれたのか、マオが
と気を回してくれたので、僕はテーブルにつく。
朝ごはんは美味しかった。僕が作るよりぜんぜんおいしかった。
思わず口からこぼれた本音は、二人しかいないリビングでは筒抜けだったのであろう。
ぱっと顔をあげるとマオはにっこりと微笑んだ。
でも、食事中に交わした会話はそれだけだった。
食器を二人で片付け、さぁ終わったと居間へ行く。
昨日の話の続きを(というか詳細を)聞かせてもらうために。
居間に入ってきた彼女にそう促す。
そう聞くとマオは一気に不安げな顔になり、こくりと頷いたあとにソファーからクッションをとってきて床にぺたりと座った。
クッションの上に座るのかと思ったけどクッションを抱いたまま座っている。どうやら落ち着くために持ってきたらしい。
そんな風に座ってぼんやりと下を見つめる彼女は、なんだかいつもより小さく見えた。
じゃあマオの両親は、それに感化されてしまったのか…。
何も悪くないマオまで、巻き込まれてしまったんだな………
顔を伏せ、はは、と自嘲気味に笑う彼女。
その横顔からは、感情なんて読み取ることはできない。
刺し傷の他にあったあざや擦り傷。
暴動に巻き込まれてしまったのだろうか。
確かに、すごく痛々しい姿だった。
それだけ言うと、彼女はうつむいて黙ってしまった。
マオは何も喋らない。僕は何も喋れない。
居心地が悪くなって彼女の背にそっと手を置くと、小さく震えているのが分かった。
そっとマオの小さな背中を撫でる。
見かけによらずプライドが高いからこのまま背中を撫でてたら怒られるかなーと思ったけれど、
僕が背中を撫でていたら堪え切れなくなってしまったようで
という声が聞こえ始めた。
――――どれだけの間、僕は彼女の背を撫でていたのだろう。
ずっとすすり泣いていた彼女が、少し顔を上げてぽつりぽつりと話し始めた。
話しながらしゃくりあげ、だんだんと泣き声ははっきりとしてくる。
泣きながら、「もう嫌」と何回も言っていた。
マオは、これほどまでに弱った姿を僕に見せたことはあっただろうか。
話している時はいつも明るくて、僕がする話がつまらなくたって笑って聞いてくれたマオ。
僕が落ち込んでいたときに力強く励ましてくれたのも、マオだった。
僕より静かだったけれど、僕よりずっと明るくて、前向きで、強かった。
そう見えていた。
でも今、マオは僕の前で涙を流している。
助けて、と言っている。
……助けてあげたい。
ずっと助けられたままじゃいられない。
僕は行動することを決意した。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。