あなたと久し振りに会うたびに、少し背が伸びていることに気付かされる。隣を歩いていると、目線が違っているから別の人みたいに感じるの。この気持ちを見透かしてほしくて、早起きしてたくさん準備したのに、今日のためにしたネイルも、袖の中に隠してしまった。
「彼女ができた」
そう言った君は、頬を赤らめて口元を緩めていた。私はいつも通りの表情で、何も言えなかった。
微炭酸が好きだった。強すぎない刺激が、私は好きだった。でも、恋を炭酸に見立ててしまうようになってから、あまり好きでは無くなってしまった。誰にも気づかれない小さな音で、私の恋も弾けて、消えて、水に溶け込んでいく。君にだけだった。こんなに純情でいられたのは。手遅れの素直さに、今更泣いたって意味がない。
「友達なら、隠し事はしないでいようね?」
まだ私が、気持ちに気づかないでいたときの約束が憎い。気持ちに気づいてから、信号待ちで君が不意に飛ばした冗談で、思い切り笑えなくなってしまった。ねえ、こんな私をつまらなく思うでしょう?
「一口飲めよ。好きだっただろ?」
無邪気な顔で、私の好きだったサイダーを差し出す君。
「…ありがと」
一口飲むと、気の抜けた味がした。控えめで、当たらず障らずの私と重ねてしまう。こんな厄介な気持ちに気づいたあの日から、私は弾けきれない。そんな自分が、一番嫌いだ。わざと、君の手に触れることができなたらどれだけ良かったか。…想像しただけ、無駄だってことは分かっているのに。
予告もくれずに、私の青い季節はやってきた。その自覚が君より少し遅かっただけで、これだけの差ができるのね。
信号がちかちかしている。早く渡らないといけないのに、誰も聞き取れないほど小さい声で、”好き”が溢れた。君にはきっと聞き取れなかった。でも、それでいい。私の初恋は、誰にも気づかれずに終わっていい。
そう思っていたら、君がこっちを振り向いた。
…今更、届いたって意味がないのに











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。