第99話

面倒見
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2025/06/29 14:57 更新
—ナビちゃんお預かり中の、ユジンとギュビンのある昼下がり—

「……え、これってほんとに3歳?」

ユジンはソファに座って、目の前のナビちゃんが並べたぬいぐるみを見つめる。
ぬいぐるみたちは整列し、それぞれに名前がつけられ、ナビちゃんは真剣な表情で“授業”をしていた。

「こっちはうさぎの“うさこちゃん”で、こっちはくまの“くまおにいちゃん”、で、これがギュビン」

「ちょ、まって、なんでぬいぐるみの中に俺いんの!?しかも顔めちゃくちゃ潰れてるクッションやん」

ギュビンが突っ込むと、ナビちゃんは「だってギュビンおじちゃん、やわらかくてふわふわだから〜」と悪気ゼロの満面の笑み。
ユジンは笑いをこらえてソファの背にもたれた。

「ナビちゃん、じゃあその“ギュビン”はどんな役?」

「先生!」

「それ俺やりたい!」

「だめ〜、ギュビン先生じゃないと、ナビちゃん授業がんばれないもん!」

そう言ってナビちゃんは、ぬいぐるみたちに向かって「今日の授業は、ぱぱのおはなしです!」と叫ぶ。
ギュビンは一瞬目を丸くして、それから柔らかく笑った。

「……パパのおはなしって、何?」

「パパね〜、ナビちゃんが泣いたらすぐぎゅってしてくれるし、いっつもおいしいごはんくれるの!あと、テレビも見してくれる!」

「それ、ただの“甘やかし”なんじゃ……」

ユジンがぼそっと言ったが、ギュビンは嬉しそうにうなずいた。

「……いいねぇ、そういうの。ナビちゃんのなかで“パパ”って言葉が、もうちゃんと“あったかい人”って意味になってるんだな」

そのとき、ナビちゃんが突然ギュビンの方に駆け寄ってきた。

「ギュビンせんせ〜、おなかすいた〜!」

「おっと、じゃあそろそろおやつの時間にしよっか」

そう言って立ち上がるギュビンに、ユジンも続く。

「じゃ、俺がジュース用意してくるね」

「じゃあ俺は、フルーツ切るわ。ナビちゃん、今日はいちごとバナナどっちがいい?」

「いちごーーー!!」

元気な返事に、ふたりは笑いながらキッチンへ。
ナビちゃんはリビングで、“ぬいぐるみたち”と一緒にテーブルを囲む準備をしていた。

ふと、ギュビンは切りながらぽつりとつぶやいた。

「……ああいうの見るとさ。やっぱ欲しくなるね。子ども。」

ユジンはジュースを注ぐ手を止めて、ギュビンの横顔を見る。

「……いつか、できたらいいね。俺とギュビンの家にも、ナビちゃんみたいな子」

ギュビンがふっと笑う。

「うん。……きっと可愛いと思う」

その言葉に、どこか未来の家族のかたちが重なるようで——
午後の光の中、静かであたたかい時間が、穏やかに流れていた。
___

玄関の扉が「カチャ」と音を立てた瞬間——

「パパーーーー!!ママーーーーっ!!」

ナビちゃんは、絵本を読んでいたソファから跳ねるように立ち上がり、全速力で玄関に向かって駆け出した。
小さな足音がフローリングを駆ける音が、ぴたぴたと家中に響く。

ハオがドアを開けて数秒、ナビちゃんが勢いよく飛び込んでくる。

「ただいま、ナビ」

「パパぁぁ〜っ!!!」

そのままハオの脚にしがみついて、嬉しそうにほっぺをすり寄せる。
ハオはしゃがんでその小さな身体をぎゅっと抱き上げた。

「よしよし、いい子にしてた?」

「うん!ギュビンおじちゃんとユジンおにいちゃんと、ぬいぐるみの学校したの!あとね!いちごも食べたの!」

元気な報告にハオが微笑むと、今度はハンビンの方へ身体を乗り出して、両腕を広げた。

「ママ〜!ぎゅってして〜〜!!」

「はいはい、ナビナビは今日も甘えんぼだねぇ」

ハンビンがナビちゃんを受け取るように抱き寄せて、何度も頬にちゅっちゅとキスを落とす。ナビちゃんはケタケタと笑い声を上げて、嬉しそうにハンビンの首にしがみついた。

リビングから出てきたギュビンが、呆れたように肩をすくめる。

「ずっと“パパとママもうすぐ来る〜?”って何回も聞いてたんですよ。絵本も読みながら時計ちらちら見てて。」

ユジンも後ろから出てきて、「あの集中力、将来サッカーじゃなくて演劇に行くんじゃないかって思った」と冗談を言いながら笑う。

「だって!ナビ、ママとパパがいっちばん好きなの!」

ナビちゃんが元気にそう叫んだ瞬間、ハンビンもハオも同時に顔を見合わせて、思わず笑ってしまった。

——小さな命がくれる、いちばんの「おかえり」。
その日、夜ご飯はナビちゃんの大好物ばかりの特別メニューになった。

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