第18話

それでも救いたいから
137
2022/08/17 02:54
ネロ
ネロ
呪いだとしても、俺を救いたい……?
ネロ
ネロ
ははっ、認めるなんて潔いな
ファウスト
ファウスト
……………
ネロ
ネロ
でも、その曲を聞いても俺は変わらねぇよ。少し救われて……また、消えたいって想いが強くなるだけだ
ネロ
ネロ
だからもういい……ほっといてくれ
レノックス
レノックス
……ネロ
ネロ
ネロ
………先輩……?
レノックス
レノックス
俺にはネロの気持ちは分からない。人の思いは全て理解出来るものではないから
レノックス
レノックス
それでも、俺はあなたの心に寄り添いたいと思った
ネロ
ネロ
は……?
レノックス
レノックス
ついさっきまでネロが作った曲を聴いた。どれも才能溢れる素晴らしいもので、心をゾワゾワとざわつかせた
レノックス
レノックス
あなたには才能がある。そして、あなたの曲を待っている人がいる
レノックス
レノックス
あなたが消えたら、あなたの曲は一生聞けなくなる
レノックス
レノックス
才能があるからこそ、人より苦しんでしまうことがある。期待されて、それが重くて、キツくなる
レノックス
レノックス
俺もそうだった。運動系は天才的だと称されて、大きな期待を背負わされてキツかった……正直に言うと、今もキツい
レノックス
レノックス
期待されるのは苦しいだろうが、それでも精一杯頑張っているうちに、自分が想像出来ない素晴らしいものを得ることが出来るだろう
レノックス
レノックス
俺も、そうだったから……
ファウスト
ファウスト
レノ……
レノックス
レノックス
あと、ファウスト先輩に会わせてくれてありがとう、ネロ。あなたがここに戻るのが嫌なら、俺は頑張ってあなたに近付けるように努力するつもりだ
ネロ
ネロ
…………
ブラッドリー
ブラッドリー
ネロ
ネロ
ネロ
………何だ?
ブラッドリー
ブラッドリー
きっとお前は、俺のことが嫌いで顔も見たくねぇだろうが、言わせてくれ
ブラッドリー
ブラッドリー
お前……それで良かったのか?
ネロ
ネロ
は……?
ブラッドリー
ブラッドリー
テメェは、何でも俺のことを褒めてくれた……幸せだったな……
ブラッドリー
ブラッドリー
幸せを与えてくれるテメェを縛り付けて苦しめたのは俺だ。絶好されるのも当然だ
ブラッドリー
ブラッドリー
だが、俺と俺との過去を嫌って真面目な人間になろうとして、自分を見失っちまったらお門違いだ
ブラッドリー
ブラッドリー
お前はお前だ。俺はずっと見てきた
本気で歌を楽しむテメェを……
ブラッドリー
ブラッドリー
自分が壊れるぐらいなら辞めちまえ
……なんて、簡単に言えるわけねぇけどな……消えて欲しくねぇんだ
ブラッドリー
ブラッドリー
お前は、大切な元相棒なんだから……
ネロ
ネロ
……ブラッド……
フィガロ
フィガロ
まぁ、天才だろうがお金持ちだろうがカッコイイ子だろうが、キツいことはあるよね
フィガロ
フィガロ
Neinがどれだけすごい曲を作れたとしても、一番欲しいものが手に入らなければ、Neinにとって無意味だと思うんだ
フィガロ
フィガロ
だから俺は、Neinが消えたいなら好きにすればいいと思う
フィガロ
フィガロ
俺達が色々言ったところで、Neinの問題はNeinにしか分からないからさ
ネロ
ネロ
…………なら
フィガロ
フィガロ
……でもさ、俺達って何だかんだ言って、似てる気がするんだ
フィガロ
フィガロ
周りに少しずつ自分の形を変えられそうになったり、抵抗したり、受け入れたりして―――
フィガロ
フィガロ
そうやって必死になって頑張っているうちに疲れて、全部がどうでもよくなる……そんな感じが似ていると思うよ
フィガロ
フィガロ
あまりこの気持ちを分かってくれる人なんて中々いないからね
フィガロ
フィガロ
だから俺は……Neinがいなくなったらただ寂しいと思うよ
ネロ
ネロ
……勝手なことばかり
ネロ
ネロ
勝手に寄り添って、勝手に切望して、勝手に共感して、勝手に救おうとして……
ネロ
ネロ
やめろよ……もう、十分だろ……
ネロ
ネロ
俺は消えたい。それが俺の本当の想いなんだ
ファウスト
ファウスト
……Nein
ファウスト
ファウスト
それでも、僕はNeinを救いたい
ネロ
ネロ
もう、疲れたんだ……!
ネロ
ネロ
希望があるかもって……まだ見つかるかもって思うのが
ネロ
ネロ
だから、最初から見つからないって思っていた方が楽だった
ネロ
ネロ
だから……もう……もう……!
ネロ
ネロ
もう、救われるかもなんて、思いたくねぇんだよ!!
ファウスト
ファウスト
…………っ
ブラッドリー
ブラッドリー
……………
ネロ
ネロ
もう疲れたんだ!!探しても、探しても、探しても探しても探しても!!
ネロ
ネロ
見つからなくて………また探して、違うって、絶望して……
ネロ
ネロ
――もうこれ以上……どうしようもねぇだろ!!
ファウスト
ファウスト
僕が作り続ける
ネロ
ネロ
……は?
ファウスト
ファウスト
この曲でNeinを救えなかったとしても、救えるまで作り続ける
ファウスト
ファウスト
Neinが自分を見つけられるまで、ずっと作り続ける
ネロ
ネロ
……何言ってんだ?
ファウスト
ファウスト
ずっと作る。友人の呪いだとしても
ファウスト
ファウスト
僕はもう、僕の目の前で誰かが消えるのは嫌なんだ
ネロ
ネロ
でも……でも……!
ネロ
ネロ
本当は1も消えてぇんだろ!?
ファウスト
ファウスト
…………ああ、そうだ
ファウスト
ファウスト
だからもし、僕が絶望して、消えそうになったら……
ファウスト
ファウスト
その時はNeinが『まだ見つかってない』と言ってくれればいい
ネロ
ネロ
……何だそれ
ネロ
ネロ
自分が何言ってんのか分かってんのか?そんなの、もう一つ呪いを増やすようなもんじゃねぇーか!!
ネロ
ネロ
俺が俺を見つけられるまで、1はずっと曲を作り続けねぇといけねぇ……!それを……!!
ファウスト
ファウスト
ああ、分かってる
ネロ
ネロ
……………どうして、そこまで……
ファウスト
ファウスト
それは…………僕の、ただのエゴだ
ファウスト
ファウスト
どの道僕はずっと曲を作り続けないといけない
ファウスト
ファウスト
Neinのが増えても、僕にはなんてことない
ネロ
ネロ
…………………分からない
ネロ
ネロ
見つかるまでどれだけ掛かるか分からねぇかもしれねぇ。見つからねぇまま終わっちまうかもしれねぇ……
ネロ
ネロ
それでも…………本当にやんのか?
ファウスト
ファウスト
ああ、勿論だ
ネロ
ネロ
………………………
ネロ
ネロ
ははっ、そんなに必死になってバカみてぇ……
ネロ
ネロ
………はは………ははは…………はぁ…………
ネロ
ネロ
………なら、もう少しだけ、探してみるか
ファウスト
ファウスト
……Nein
ネロ
ネロ
本当に――ずっと作り続けてくれるんだよな?
ファウスト
ファウスト
………うん、約束する
ファウスト
ファウスト
大丈夫だ、Nein。絶対にいつか、君を救ってみせるから

プリ小説オーディオドラマ