部屋に戻されてから、どれくらい時間が経ったのか分からない。
天井の照明は一定の明るさのままで、昼も夜も区別がない。
私はベッドに腰掛け、指先を強く握りしめていた。
――許可。
その言葉が、頭から離れない。
ドアの向こうで、電子音が鳴る。
次の瞬間、静かに扉が開いた。
ジャンハオだった。
手にはトレー。食事らしい。
そう返すと、彼は少しだけ目を細めた。
怒っているわけじゃない。観察しているだけ。
私は即答した。
ジャンハオは一拍置いて、トレーを机に置く。
あっさり引き下がられて、逆に戸惑う。
理屈は正しい。
でも、納得はできない。
ジャンハオは椅子に座り、静かに答える。
即答だった。
胸の奥が、ひくりと痛んだ。
そう言うと、ジャンハオは初めて、少しだけ困ったような表情を見せた。
彼は立ち上がり、私の前に立つ。
距離が近い。
逃げ場がない。
低く、静かな声。
その言い方は、
やさしいのに、選別しているみたいだった。
ジャンハオは首を振る。
一瞬、言葉が切れる。
沈黙。
私は、ゆっくり息を吸った。
彼の視線が、私に戻る。
少しの間、彼は何も言わなかった。
やがて、静かに口を開く。
即答した。
ジャンハオは、ほんのわずかに笑った。
意外な返事。
彼は私をまっすぐ見つめる。
その言葉に、なぜか背筋が寒くなった。
――今の言い方。
まるで、
触れること自体は、できるみたいじゃない。
穏やかな声。
でも、その奥にあるのは、計算か、誠実さか。
やっぱり、条件がつく。
私は、何も答えられなかった。
ドアが閉まる直前、ジャンハオが振り返る。
優しい声だった。
だからこそ、怖かった。
――境界線を引いたはずなのに、
もう、その内側に立たされている気がした。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。