―因果とは、原因と結果を示す言葉である。
2つが惹かれ合ってようやく成立する世の中の定理。
すなわち、2つで1つ。
「バランス・オブ・ウィズダム」
世の中の因果を崩し、常識では有り得ない結果を引き起こすレーテ。
彼女のレーテの恐ろしいところは、その制限がないところだ。世に存在するあらゆる原因と結果の関係を崩壊できる。もし、レーテが暴走すれば地球1つ壊すことだって容易くない。
「日曜日に生まれた子」
簡潔に言えば、重力を操るレーテ。ただし、操っているのは空気と粒子、その間に起こる反発の関係(この関係は詳しくは不明)であり、重力自体を操っているわけではない。何故なら人工だからだ。
その操従量は半径3km以内であれば可能である。
⇧治癒系レーテ
2人のレーテが互いに衝突し合った結果は、光が居た小部屋1つと扉の破壊のみ。
白かった申し訳程度の壁紙は剥がれて焼け焦げている
リーファはシェルに引っ張られ、既に廊下へと出ていた。
シェルは入り口を塞ぐように立っている
ぶっきらぼうに髪をまとめていた簪を外す。
光はその部屋の中心で何事もなかったかのように突っ立っていた。
通常であれば、収容所内で罪人がレーテを使うことは不可能だ。
ただし。
稀にいる。その"事実"を無効化したり、或いは因果を崩す者が。
「 静かな目に狂気が宿る瞬間に、人は本性を表す。 」
そう彼女がくすりと笑った、そのすぐ後。
0.1秒も経たなかった。
バンッ!!
破裂音が辺りに響き渡る。
何かが衝突したような音。
見れば鉄壁に細いものが刺さっている。
それは光頬をかすめた。罪人と言えども赤い血が滴り落ちる。
壁に刺さったそれは、先程シェルが持っていた簪だった。
重力を操るのだから物のスピードもあげられる。それは当然だ。
ただし、驚くべき事実を教えてあげよう。
"彼はレーテを使っていない。"
2人が困惑したように首を傾げる
必死に宥めるリーファ。
と、半分呆れているシェル
さも当たり前かのように話す光を見て、シェルは頭を抱えた。
とても嫌そうな表情である
顔に疲れの色が浮かぶ。
なぜだろう。こんなにゲルニカ周辺の人が疲れるのは。
そこで困惑してどうする。
空気が更に詰まった。
一瞬、動けなくなるような重さだった。
シェルが着物の裾をはたく。
リーファは腕の袖の中から首輪らしきものを取り出し、光に渡した。
目を閉じたまま笑みを浮かべる第二の天使。
その容姿は、本当に美しいのである。
首輪をつける。
カチッ、と音がした。
もしかしたら。
罪を犯した記憶を戻したとき。
彼女は堕天するかもしれないな。
ゲルニカ内部 22・23階融合 模擬戦用部屋 同時刻
入り口付近に立つ琉里。と、その向かい側にちょこんと座る人間と思しきもの。
迷い子とも見えるぐらいの幼い子供。
ただし、迷子ではない。それは有り得ないのだ。
ゲルニカの出入り口、即ち1階は全て埋められているのだから。
やれやれ、というように手に刀を持った。常に持ち歩けるわけじゃない。"虚無から生成する"のだ。
怪しげに光を反射するそいつを前にしても、動かなかった。
瞬間、得体のしれない少女の腕が切れる。
元々琉里が居た場所は氷漬けにされていた。
地面はパキパキと音を立てて、ゆっくりと冷たくなっていく。
ボトッと腕が落ちる。
その腕は凍ることなく腐敗していった。幾らなんでも早い腐敗が、進む。
血液は落ちない。断面は確かに肉だ。
少女は後ろを向いた。
後ろに、琉里はいた。
その時だった。
少女の落ちた腕がぱちんと指を鳴らした。
くすりと笑った。
背後に居た彼女が"輪切りになった"。その字面のとおりに。
辺りに血が飛び散る。
―そんな気がした。
―ゴトッ。
幼い子供の首が落ちる。
その隣に、和服姿の少女が血のついた刀を握っている。
子供の遺体がバタリと倒れる。
あり得ない早さで腐敗が始まった。辺りは凍っているのに、その血液は至って普通のように体の周りを流れた。
胴体と離れた頭が動く。くすりと笑ったままの笑み。
今、笑い始めたのだ。
キモで終わらせてはいけないと思うぞ。
声に気づいて振り返る。
入り口でテアがアイスを頬張りながら手を振った。
近づいてきて様子をうかがう。
先に攻撃したのはそいつだぞ。
子供の腕が凍った
このまま行けば頭部も胴体も凍るだろう
補足するが、琉里のレーテは「物を凍らせる」ではない。
2人がくるりと死体を背にして歩き出した。
ぐちゃ、ぐちゃ、と何かを咀嚼するような音がする。
確かにテアはアイスを食べているが。そんなにうるさく食わない。
音の正体が気になる。
2人で同時に、あと数歩というところで振り返った
真っ白な少年が、死体を見つめていた。
正しく言えば、それを貪り食う白蛇を眺めていた。
通常よりも遥かに大きい白蛇を。
少年は淡々と語り掛ける。
目はまだ白蛇を見ていた。
⇧デジャヴ
テアのコミュ力は置いておいて。
白蛇の食事が終わったらしく、口周りを真っ赤にしながら少年の近くを這い回った。
もう死体の姿形は残っていない
その顔は、至って真剣なものだった。
静まり返る。3人しかいない(蛇含めれば4体)部屋にしてはそこは大きすぎた
目に悪魔の力が宿る。
にやりと、悪魔のように沈んだ笑みを見せる。
まさに悪い顔だった。




















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。