憂鬱な金曜日がやってきた。
朝から何回溜息をついたかわからない。
高校からチャリを漕ぐこの上り坂も、
今日は少しだけ傾斜が大きい気がする。
…まあ、そんなわけないんだけど。
流れる景色はいつもと変わらない。
いつもならこんな景色も楽しめるのに。
人生1溜息をついた日になるかも。
休憩を終わらせて従業時間…と思って
今日もスマホをロッカーに投げ込む。
と、同じタイミングで
ゾロゾロと今までバイト勢の
大学生たちが雪崩込んでくる。
俺を誂うように口々に話し出す先輩たちに
むしゃくしゃを全部ぶつける。
俺はこれから22:00までのバイトが
決定してんですよ!もう!
労働法違反だろこれ!!!
プンスカ怒りながらカウンターに出ると、
後ろから先輩たちの笑い声。
時計はもうすぐ18:00になるところを指している。
この時間帯からは客が一気に減る。
最終上映時間にも人がいないことはないのだが、
大抵はこの時間帯で映画を観て
20:00くらいに帰るみたいだ。
以前熱心に通ってくれていたサラリーマンの人が、
彼女と観る映画のために
早く仕事を切り上げてここに来ているって話してくれた。
その方はもう他の地域へ転勤されたみたいだけど、
そういう話はいつまでも思い出すものだ。
素敵だと思う。
ここで紡がれる物語は。
機械に時間帯を打ち込めばすぐに出てくる候補。
なんたって、2スクリーンしかないから。
座席は金曜の夜にしてはガラガラで、
真ん中より少し上の中央通路あたりを
指差したので1人分の座席を選ぶ。
お、進学校。
ここらでは珍しい、この近くにある進学校の生徒だ。
まるまる1個、こんな小さな体に収まるのか?と
首を傾げながらも注文を打ち込んで改めて提示。
生憎カウンターに人がいなかったので
後ろを振り向いて手を伸ばす。
ガシャガシャと音を立てて
ポップコーンをボックスに入れて、
飲み物もホルダーに入れる。
カウンターに置いて精算をして、
レシートと共にポップコーンを渡した。
やっと目があったその人の目に思わず息を呑む。
ここではなかなか見かけないものだ。
こんなに、目の奥が真っ黒な人。
静かにチケットを受け取って、
入場可になったスクリーンの中に吸い込まれていく背中。
制服のスカートは規定の長さを守っていて、
うちの学校とは大違いだな…
勉強疲れかな…なんて思いながら
その背中を見送った。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!