学園長室
あの美魔女、リュミエール様がいつもよりずっと真剣な顔で、一枚の古びた写真と書類をデスクに並べていた
つむぎ:……あの、学園長? 出頭命令って……私、また何かやらかしました?
学園長:いいえ、つむぎ。今日はあなたに、あなたが背負っている「重み」を教えに来たの
リュミエール様は、隣に控える巨大な執事・ヴォルフに目配せをした。ヴォルフが無言で差し出したのは、私の母にそっくりな女性が写った古い肖像写真だった
学園長:あなたの苗字「花咲」は、ただの屋号ではないのよ。……かつてこの学院を共に創設し、そして悲劇の末に歴史から消された、もう一つの「リュミエール」。それがあなたの一族なの
つむぎ:……は? 私が……名家のお嬢様?
つむぎ:冗談でしょ! 私、うどんの湯切りで手首鍛えてるような庶民ですよ!?
学園長:嘘ではないわ。……聖、あなたから説明しなさい。……いつまでその「首輪」で、彼女への真実を隠しておくつもり?
聖:…………
九条くんが、一歩前に出た。 彼はいつもの不敵な笑みを消し、ひざまずいて私の手を取った。その手は、かすかに震えているように見えた
聖:お嬢様。……私があなたを「お嬢様」と呼ぶのは、契約だからではありません。……代々、私の家系は「花咲」の主をお守りするために存在しているからです
つむぎ:九条、くん……?
聖:私が初めてあなたに会ったのは、あのうどん屋ではありません。……十年前。あなたがまだ何も知らず、炎に包まれた屋敷から逃げ出したあの日……。私は、あなたを見失った
つむぎ:……炎? 何の話? 私、実家のうどん屋で平和に育ったんだけど……
私の頭の中に、断片的な映像がフラッシュバックする。 真っ赤な空。泣き声。そして……誰かが私の手を引いて、「逃げなさい」と言った声
聖:……お嬢様を保護し、庶民として隠し通したのが、今のご祖父様です。……私は十年、あなたを探し続けました。……そして、あのはなまる屋で、うどんを豪快に啜るあなたをようやく見つけた時……
聖:……私は、二度とあなたを離さないと誓ったのです
つむぎ:……じゃあ、一話で言った「マヌケな顔」って……。つい最近のことじゃなくて……
聖:ええ。十年前、泣きじゃくっていたあなたの顔ですよ。……少しも変わっていなくて、安心しました
九条くんはそう言うと、首元のネクタイをゆっくりと外した。 そこにあったのは、昨日見たアザ。……いいえ、それはアザではなく、「花」の形をした、痛々しいほど鮮やかな刻印だった
聖:これは花咲家の守護者の証。……この命が尽きるまで、私はあなたという主から逃げられない。……いえ、逃げたくはないのです
つむぎ:…………
頭が真っ白になった。 お嬢様? 宿命? 刻印? 全部、うどんの出汁よりもずっと濃くて、飲み込みきれない事実ばかりだ
つむぎ:……勝手だよ。勝手すぎる。……私をそんな重い運命に巻き込んで、自分だけ「お守りします」なんて、かっこいいこと言って……!
私が叫んだその時。 ドォォォォン!! という地響きと共に、学園の正門が爆破される音が響いた
ヴォルフ:…………!(即座に学園長の前に立ち、武器を構える)
聖:……来たようですね。お嬢様の血筋を、そしてその「遺産」を狙う、ハイエナたちが
九条くんが立ち上がり、私を背中に隠した。 彼の背中から、今までとは全く違う、氷のように冷たい殺気が溢れ出す
聖:お嬢様。……これからは、綺麗事だけでは済みません。……どうか、私から目を逸らさないでください
つむぎ:……九条くん!
私の平凡な毎日は、音を立てて崩れ去った。 「うどん屋のつむぎ」ではなく、「花咲家の当主」としての、本当の戦いが幕を開けようとしていた












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。