第8話

 007 . 太陽と使者 ¿?
1,107
2026/03/28 10:00 更新





   朝日から逃げて数分。

   道が分からなければ、地球のことすら
   分からない妾は、とりあえず誰かに
   話しかけてみることにした。




あなた 
おいお前、妾は月から来たエリートだ。
姫を知らないか?
︎︎
元気だね〜、飴食べる?





あなた 
たけのこモツ煮込みの
かぐや姫って知ってるか?
︎︎
た、たけのこモツ煮込み……?
ままはどこ行ったのかな?





あなた 
なぁなぁ、
︎︎
………





あなた 
………





   誰に話しかけても、
   妾の話は信じてもらえない。

   それに、誰もが
   見て見ぬふりをしようとした。

   一言だけで通り過ぎて行く人。
   そもそも無視をする人。

   朝日みたいに、妾の目を見て
   笑いかけてくれる人はいなかった。




あなた 
……このままじゃ、本当に追放される





   明るかった太陽は、
   いつの間にか沈みこもうとしていて、
   太陽すら妾を見放すか……なんて。

   そんなことを考えながら
   知らない道を歩いていた時だった。




︎︎
お嬢ちゃん、迷子?
ぱぱとままは?
あなた 
妾はエリートだ、
迷子になんてならない!
︎︎
そっかそっか。
でももうすぐ暗くなるからさ、
良かったら一緒に来ない?
お菓子も買ってあげるよ





   妾に話しかける男がいた。

   妾を子供扱いしたような声音と、
   いやに気味の悪い顔。




あなた 
妾がそんな子供騙しに引っかかると?
舐めすぎだ、いくらなんでも
お前のそれはあからさますぎる





   月から来たとて、悪い人間くらいわかる。
   コイツについて行ったら、
   きっと良くないことだって。

   だから妾は、差し出された手を
   跳ね除けて、踵を返した。
   今晩をどう過ごそうか考えながら。




︎︎
待ってよお嬢ちゃん。
大丈夫、悪いことはしないから





   でも、自分よりも一回り大きな手に
   手を掴まれて、逃げ道が
   塗りつぶされてしまった。




あなた 
離せ!
妾は月のエリートだぞ!
︎︎
そうなんだね、すごいね
あなた 
……っ、





   簡単に流される話。
   引きずられる体。
   コイツは、話を聞いてくれさえしない。

   対抗するように髪を光らせれば、
   日の落ちた空間に、小さな灯りが灯る。




︎︎
……なんだそれ、髪が、
お嬢ちゃん、高値がつきそうだねっ…!
あなた 
いたっ、離せ…!!





   何をしても効かないどころか、
   握られる手が強くなるばかり。

   自分の無力さを痛感しながら、
   朝日から逃げたことを後悔した。

   これじゃあ姫を見つけるどころか、
   人間に捕まって終わる。

   これなら、クマに追いかけられて
   いた時の方がマシだったな……
   そんなことを思っては、瞳に膜が張られた。




︎︎
あなたっ……!
やっと見つけた
あなた 
……朝日、?





   その時、沈んだはずの太陽が
   再び妾の前に現れたんだ。




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