ピンポーン
鳴子と約束したサイクリング当日、朝7時に鳴子はやってきた。
はーい......あら〜!鳴子くんじゃないの!久々じゃねえ。
一階から鳴子とお母さんの話し声が聞こえてきた。
2階の自分の部屋からひょこっと顔を覗かせながら、一階にいる鳴子にそう言った。
はやる気持ちを押さえながらしっかり日焼け止めを塗り、鏡に向かってよしっ!と言うと、あなたの下の名前は階段を駆け降りた。
はいはい、気をつけてねーと玄関先に立つお母さんから言われて、あなたの下の名前もはーい!と答えた。振り返ると鳴子がもう自転車に乗って待っている。
ついに、鳴子と2人で自転車で走るんだ。
そう思うとついつい、頬が緩んでしまう。
あなたの下の名前も軒下に置いてある自分の自転車を取りに歩き出した。今日もよろしくね。そう思いながら、自転車に跨り鳴子の方へと向く。
そして、長いようであっという間のサイクリングが始まった。
家の前からスタートしたサイクリングは国道17号沿いに向かっている様子。
少し前を走る鳴子が後ろをちらっと振り向きながら笑っていた。
にやっと。
引っ越してきてから、あまり乗ってないあなたの下の名前はここらの地理を把握できてない。でも、なんとなくわかる。このニヤリ顔は良い意味じゃない。きっと。
あなたの下の名前は顔をヒクつかせながら、もう一度聞く。
ほんまかいな!と心の中で叫びながら、鳴子の後ろ姿を見た。
なんとなーく、昔よりは大っきく見えるよなぁ。
周りの景色を見るでもなく、じーっと鳴子の方を見る。
走りながら、目の端に涙が浮かぶほど笑っている。
笑う流れのついでに本音も混ぜてみた。
鳴子は、せやろ!1センチ伸びたんや!とかドヤ顔で言っている。
そこから、少しの間、前だけ見て風の音と車の音、バイクの音信号の音を聞きながら走る時間があった。
あなたの下の名前も鳴子も無言だった。
市街地区間が終わる少し前に、鳴子が口を開いた。
そう言って、山に入る前の最後の信号であなたの下の名前が前に出ると、鳴子は満足そうに笑った。
鳴子からプレッシャーを感じる。
これが今年インターハイを制したメンバーの1人の圧なんだ。肌にピリッと感じる。でも、知ってる本気の鳴子はいつもこうなんだ。腕を組んで、地面に片足をついてにやっと笑っている。
それでも負けるわけにはいかない。
わたしだってがんばる。
ドキドキする胸にギュッと手を当てて大きく息を吸った。
信号が変わって、あなたの下の名前は大きな勝負に踏み出した。
ーきばれや、あなたの下の名前ー
走り出す前、ぼそっとそんな言葉が聞こえた気がする。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。