——パタンッ
ノートを閉じる音が響く。
最後にアイツが来た日から、それなりに長い時間が経った。
繋がれていた機械もほとんど取れて、“個性”の使用を制限する機械だけになった。
それだけになってからは、時折外に出されるようになった。
日光浴みたいな、そんなもの。
でも、昼間の光は眩しくて、いつも不快に思いながら、リボンを挟んだノートを抱えて、ぼんやりとベンチに座っている。
刑務作業だとかはやらされないから、こうしてノートを開いては閉じて、毎日をなあなあに過ごしている。
ノートを開いて、いつもはじめに思い出すのは、圧紘さんの声。
張りのあるエンターテイナーとしての声や、静かな潜む者としての声、怪我をしたときにかけられる心配の混ざった優しい声。
全部が、はっきりと思い出せる。
髪に着けたバレッタを取って、掌に乗せる。
少し大きい、白いリボンのついたバレッタ。
焦げたリボンの代わりに、また圧紘さんがくれたもの。
真っ白で、綺麗で、純粋で、嬉しいもの。
これを眺める時間が、ここでできることの中で一番好きだ。
ふと思い立ち、ノートに挟んだリボンを取り出す。
バレッタをもらうより前からの、宝物。
少し焦げたけども、大切なのは変わらないリボン。
それを、なんとなく火傷跡の残った左手の薬指に巻いてみる。
結ぶことはできない長さだけど、巻いてみる。
なんでかわからないけれど、自嘲するような笑いが漏れた。
何が違うのかも、はっきりとしないまま呟く。
しばらく、どこか動けずにいた。
解こうとも思わず、指を動かそうとも思わない。
ただそこに巻かれているのを、ただ見つめているだけ。
それが、妙に心地よかった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。