生きた心地のしなかった一日は、弔くんと解放軍リーダーの戦いで終止符が打たれた。
私たち敵連合は、“超常解放戦線”となった旧解放軍に所属することとなった。
多少不本意ではあるが、背骨のない組織ではない。
そんな組織に所属して少し。
部屋の扉を開けたところで、圧紘さんが目に入る。
いつも通り黒い覆面と仮面をつけたまま、シルクハットを抱えてソファで仰向けに転がっていた。
寝ている?
この後にスケプティックとの会議があったような気がして、起こした方が良いのかと葛藤する。
小さく、訊いてみた。
返答はなくて、すう、と小さな寝息が部屋を満たす。
私と同じ、潜む者の寝息。
小さくて、呼吸をしていないのかと心配になるような音。
声をかけても起きる様子すら見せない。
ここは、落ち着くのだろうか?
そっと手を触れる。
その瞬間、腕を引き剥がされると同時に、ぽん、と圧縮された。
……かと思いきや、数秒して元に戻される。
受け身を取る間もなく、背中から床に落ちる。
圧紘さんが、こちらを見下していた。
——え?
冷たい。
互いに数秒黙った後、いつもの温かさに戻って差し出された手を取る。
立ち上がりながら、服についた砂埃を払う。
……素手で、触れてしまったからか。
圧紘さんは、ヤクザに腕を飛ばされたあの日以降、素手で触れられるのを恐れているように見えた。
普段は、それ自体を隠しているように見えたけど。
分かってしまった。
分かってしまった以上、気づかないフリはできても、無視はできなかった。
だから、極力手袋をして生活するようにしていた。
なるべく、触れないようにしていた。
でも、今、外していることを忘れて、触れてしまった。
だから、圧紘さんは何も悪くない。
体を心配してくれる圧紘さんに返事をしながら、スラックスのポケットに入れていた手袋を引き出す。
ぐい、と深く手袋を着ける。
レザーが小さく鳴いた。
時計を見ながら、口にする。
そう言う圧紘さんに同意を示す。
本当に、あの会議はつまらない。
理念だの今後の活動方針だの。
そんなもの、一言で済ませよう。
軽く髪を整えながら咎めるように口にした。
軽口を叩き合い、少し重くも軽く見せた足取りで、会議室へ向かった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。