第4話

第1章 第4話
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2024/02/21 23:30
「おし、出来た!」
「こっちも皿並べ終わったよ〜」
「りょーかい。あ、セラお運ぶの手伝ってくれ!」
「はぁい」
雲雀、やっぱり料理上手いよなぁ……
本当に雲雀の料理は美味しくて、食べていると温かくなって幸せな気持ちになる。
「おっし!いただきます!」
「うっわ……美味そ、いただきます」
「ん!これ美味いよ!ひば!!」
「んは、よかった!」
うん、本当に美味しい。

……雲雀は、本当に凄いや。俺とは……大違い。
どうすれば、そんなに温かくなれるのかな。
人を幸せに出来るのかな。人に勇気を与えられるのかな。

……どうやって、人の心を盗めるのかなぁ。
「ん?セラお?」
「え、あ……何?」
「いや……なんか、暗い顔してたから……あ、もしかすっと、口に合わんかった、?」
目尻を下げ、心配する顔。ああ、こんな風にいつも俺に何かあったりするとそんな表情かおをしてくれる。
……優しすぎるよ、ひば。俺は、そんな雲雀が汚れるのが……消えてしまうのが、怖い。だから……
「いや、ちょと考え事してただけ。ご飯、いつも通り美味しいから安心して」
俺は、これ想いを隠す。
「……そっか!なんともねえならよかった!けど、なんかあったらなんでも言えよ〜?」
ごめん、雲雀。
「……うん、ありがとう」
これは……この気持ち好きは、雲雀にだけは絶対に言えない。
だから、何でもは言えない。
言ってしまて、この関係が壊れてしまうのが怖い。雲雀が……俺の太陽が居なくなってしまったら、俺はきっと……また独りになる。
降り止むことを知らない雨が、ずっと……降り続ける。
もう、あんな想いはしたくない。
独りは怖い。
だから、
……だけど、
いつまでも、隠し通せるほど小さい想いではない。
いつか、ふと言ってしまうかもしれない。
その時は……その、時は、どうしようか。
雲雀に、嫌われたら……どうしよっか。
……もうこんなことを考えるのはよそう。
今はまだ、ここに浸っていたい。
これが、白昼夢でも構わないから……今はまだ。



セラお……。
何だか、さっきから元気がないように見える。
だけど、奏斗達は気がついていないようだった。だから、俺に気のせいだと思ってたけど……やっぱり、元気がなさそうに見える。
「セーラお!」
「…ん?どーしたのぉ?」
「これ、試作品なんだけど食うか?」
「わ、美味しそう……!新作で出すの?」
試作品。新しくカフェのメニューで出す予定だった紅茶風味のカヌレが入った袋をセラおに手渡す。
嬉しそうに貰ってくれた。……やっぱ、気のせいやったんかな、?
「そー!だから、せらおに感想聞きたくってよ!」
「あー!セラだけズルーい!僕も食べたいんだけど!!」
「あー……すまん、一個しかもってこてねえわ」
「えー!」
「あ、けどカフェにはあるから……明日試食お願いしてもいいか?」
「それなら……まあ、許してやる!」
「んは、何様や」
おっと、セラおは……っ。
悲し、そうな顔……?いや、違う。寂しい……?
っせらお……?
「…!なに、雲雀?」
あ……
「あ、いや、そのぉ……何でも、ねえ」
「そっか……あ、カヌレ、すっごく美味しいよ。けど……そうだなぁ、これ女性向け?」
「あ、うん……最近、女性のお客さん多くって、」
「うーん、だったらもう少し甘めでもいいかも。ちょっとビター過ぎる気がする」
「あー……まじか、おっけ、ありがとな!」
「ううん。こんなことしか、俺……雲雀の力になってあげられないから、だから」
「俺、セラおに助けられてるよ、ちゃんと」
「え……」
「おっし、そろそろ片付けすっか!おーい、奏斗!皿洗いくらい手伝えよ〜?」
「…えぇ、」
「じゃあさっきの話は…」
「やるやるやる!やるから!!」
「っはっはは!!じょーだんじょーだん!」
せらお、あんまし……自分を悲観するようなこと、しないで。
隠そうとしないで。
セラおが、本当に隠そうもんなら、絶対俺でも本当のお前を見つけてやれない。
照らしてあげられないし、救ってもやれない。
だから、だから……俺から離れないで。俺から目を逸らさないで。
迷子にならないように、次の止まり木がわかるようにずっと、ずーっと照らし続けるから。
俺は、それくらいのことしかできないから。
過去の記憶は消せないから。焼き付いてしまった苦い記憶は俺には拭えない。
前に進むのは、セラお自身だから。
ねえ、セラお。
もう少し、もう少しだけでいいからさ……頼りないかもだけど、俺のこと……
もっと頼ってくれねえか。

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