月は、いつ見ても美しいと思う
美しい月の化身は、きっとこの世の中に居ると…私はそう思ってる
そんな月の美しい夜、私はとあるライブハウスにいた
左には楽しそうに笑う空却君、右には呆れた様子の獄兄さんが私を挟むように立っていた
なぜ、この様なことになっているかと言うと……時は今日の朝まで遡る────
朝、寂雷兄さんと共に座禅を組んでいると
少し離れた私のスマホから通知音が聞こえてきた
座禅をやめて、スマホを取りに行くとディスプレイには空却君の名前が表示されていた
スマホのロック開いてメールの内容を見ると
十四君ってあの眼の綺麗な子だよね
バンドやってるんだ……
それから寂雷兄さんにその事を話すと快く了承してくれた
そうして、昼間は行く為の準備をして夕方頃に獄兄さんと空却君が迎えに来てくれた
獄兄さんはそう言いながら目に不安を浮かべていた
……でも、後ろの空却君は気にしてなさそうなんだよな
空却君のその言葉に獄兄さんは眉をピクリとも動かし、険しい表情を浮かべた
……と、言った感じで今はライブが開催されるライブハウスにいる
私達の周りにいるバンギャ?さんと言われるファンの子達の服がとっても可愛らしい
ふわふわのフリルが付いたお洋服に鎖や髑髏が付いている
一方の私の方は本当にシンプルなYシャツ風のワンピースに薄紫色のカーディガンを着ている
私自身がシンプルなのが好きってのもあるが……あんな感じのお洋服も着てみたいものだ
そう思っていると会場の電気が消えて、暗闇から声が聞こえてきた
バっとステージに光が当てられるとそこにはまるで月の化身の様な綺麗な服を見に纏った十四君が居た
十四君の登場で会場の熱は一気に上がり、周りは歓声を上げ始める
二人の会話からよく十四君のライブを見に来ているのを伺えた
そう思いながら重低音や歓声が鳴り響く会場をどこが傍観する様に見る冷静な自分に少し……呆れてしまう
フッとステージに目を向けると十四君がこちらを見ているのに気がついた
そして……私と目が合った
その瞳は歓喜と嬉しさが溢れていて、凄くキラキラと輝いていた
すると十四君はニコッと私に笑顔を向けてくれた
その笑顔もとても可愛く……人を惹きつける魅力的な笑顔だった
その小さな声は重低音で二人には聞こえていないだろう
……それでいい、この薄暗い気持ちは私だけが知っていればいい
私の知らない二人の事を、彼は……知っている
それを近くで見ている、感じでいる
あ…………ダメだ、今日はダメな日だったんだ
暗い暗い─────深淵に似た暗い感情に、侵食されていく
そう思っていると、背中に手が置かれた
顔を上げると少し心配そうに獄兄さんが私を見ていた
ダメだ、獄兄さんに心配をかけさせる訳には行かない
どうにかして、沈んだ心を浮かべないと
そう思っているとステージの方から一際大きな歓声が上がった
顔をそちらに向けるとステージから十四君が降り、私達の方へと歩み寄ってきていた
十四君はそう言いながら私の頬に手を添えて目線を合わせた
その瞳には心配と愛おしさが浮かんでいて
私は……その瞳に見惚れてしまった
そうして、私の手を引いて十四君はステージへと向かう
後ろから獄兄さんの静止する声が聞こえたが止まることなくステージの前へと連れていかれる
そう言って十四君はステージへと戻っていき、私はバンギャのお姉さん達に囲まれてしまった
でも……そのおかげで、顔を上げることが出来た
キラキラと輝くステージと月の化身の様な十四君は
本当に…………美しいと思えた
その日、私は初めて声を上げて笑った
沈みかけていた心を、私は彼に救われたのだ
その優しい気持ちが、今の私を救ってくれたよ
その後は本当に楽しくライブを観る事が出来た
……たまには、こういう日があっても良いね













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。