第60話

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2021/06/27 17:00
オーバーホール
オーバーホール
ミミック
ミミック
あなた
だったら私は、きちんと私の目で『お父さん』の愛情をこの目で確かめたいです。
音本 真
音本 真
あなた
…それがまだ、『お父さん』に対して私が良いように思い込みたいだけだとしても。



言い終えた私に最初に反応を示したのは、

部屋の中央に置かれたローテーブルの両脇に据え置かれたソファに座っていた、

ミミックさんだった。


ミミック
ミミック
で、その " 後 " はどうする?
あなた
ミミック
ミミック
確かめたその後、お前はどうするんだ、って、聞いてんだ。






確かめた、


___その『後』?




ミミックさんの言葉を全て理解した瞬間、はたと気づく。


私はその後の事を考えていなかった事に。


「やっぱりな。」とため息混じりに言ったミミックさんは、私に人差し指を指しながら話し始める。


ミミック
ミミック
悪いが今後、お前とはもう死穢八斎會ウチは金輪際関わらねぇ。勿論、面倒も見ねぇ。
あなた
ミミック
ミミック
それでも父親の所に戻るってんなら、確実に居場所が無くなることは覚悟しておいた方が良い。
クロノスタシス
クロノスタシス
ミミック
ミミック
お前には父親の所しか無ぇからな。
クロノスタシス
クロノスタシス
本部長!
オーバーホール
オーバーホール
クロノ、今は黙ってろ。
クロノスタシス
クロノスタシス
っ…


何か言いたげなクロノさんを他所に、ミミックさんは話を続ける。


ミミック
ミミック
お前が1番よく分かってる筈だ。
今帰ればどうなるか。
あなた
___


運が良ければ半殺し、

悪ければ…多分、私はお払い箱になるだろう。


あの廃れたアパートの一室で死を待つのみになる。

ミミック
ミミック
それでも我を通すのか?
あなた


もしこの場で本音をたらたらと吐露しても良いのなら、




怖い、嫌だ、痛いのは嫌だ、苦しい思いはしたくない、辛い、痛い、恐い、怖い、痛いのは嫌だ、痛いのは嫌だ、








『帰りたくない』







…と、言っていただろう。



成人男性から思いっきり振られる暴力をこれから確実に受けるのだ。

それを受けた私の未来の姿を想像して、「帰りたい」と心からは思えなかった。




だけど、いつも私の額に落としてくれるキスは何だったのか。

愛してくれている証なのではないか。





あなた






私は、

それだけを確かめられたなら、それで良い。






あなた
構わないよ、ミミックさん。
クロノスタシス
クロノスタシス
あなた
私、それでも帰る。
ミミック
ミミック



ミミックさんの鋭い視線は瞼に遮られると、はぁ…とため息を再び吐いた。


ミミック
ミミック
だとよ、オーバーホール。
さっきコイツが言ってた事といい、変なことでも吹き込んだのか?
オーバーホール
オーバーホール
さぁな。籠城 あなたが下した決断がそうであっただけで、俺には関係ない。

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