あいつらがいなくなってから、何年経ったんだろう。
俺はひとり、世界の裏側で旅をしていた。
世界の裏側。ここには、表側に居られなくなった種が辿り着く場所。
表側は人間たちの楽園。人間たちのせいでいられなくなったもの達がここに集う。幻想種が大抵の割合を占める。
俺たち吸血鬼も、そのひとつだ。
人間のせいで世界から追いやられた。
俺たち吸血鬼は、11人しか残らなかった。
吸血鬼と言っても、俺たちは血を吸わない『真祖』と呼ばれる類の種だ。
血を吸うことも出来るが、生きるためには不必要なものだ。
俺たちは基本何も食べないし何も飲まない。
それで生きていられるから、俺たちは死なない。
死なないはずだった。
表側の異常は俺たち裏側に住むもの達にも影響を受けた。
…これは、呪いの類だろうか…?
次々と幻想種が死んでいく。
その謎を解明すべく、俺の仲間も何人か表側に行こうとした。
…しかし、表側に行くのはほぼ不可能だ。
何故なら抑止力があるから。
抑止力は、人類を存続させる力を持つアラヤと、星を存続させる力を持つガイアのふたつがある。
人類を脅かす存在は、抑止力によって消される。
俺たち吸血鬼は、その類のものだと星から認識されている。
…ふざけてるよな。追いやられたのはこっちだっていうのに。
俺の仲間はその抑止力によって消されたものもいれば、表側の呪いにやられた者もいる。
何故俺だけ生き残ったのかは分からない。
…ここにいるのはもうやめよう。
俺はこの世界の裏側を旅することにした。
ここまで読んで下さってありがとうございます。
今更ですが、この物語の主人公はねろちゃんです。多分皆さん知ってたと思いますが。
それではまた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。