帰り際、ふと翔太に名前を呼ばれて、ほんの少しだけ胸が跳ねる。
この関係が、今すぐにでも消えてしまいそうな関係なのは分かってる。
いくら俺が「行かないで」、「棄てないで」と縋ってみても、きっともうどうにもできない所まで来てしまったんだということも。
でも、せめて翔太から別れを告げられるまでは、「彼女」という立場にしがみついていさせて。
翔太をマンションのエントランスまで送って、自分の部屋に戻る。
リビングに入ると、本当にかすかだけど、翔太のつけているシトラスの香水の残り香がして、張り詰めていた心がいくらか落ち着いていくのを感じる。
俺が泣きそうになっているのにすぐ気づいて、優しく抱き寄せてくれたときの匂い。
デートの帰りに、珍しく向こうから手を繋いでくれた時の匂い。
あまりにも、この匂いに思い出が染みつきすぎていて、一番落ち着く自分の部屋のはずなのに、ちょっとだけ、この部屋にいるのが辛い。
ハンガーに掛けてあったロングコートを羽織って、スニーカーに足をねじ込む。
何気なくポケットに手を入れると、かさついた紙の感触があった。
引っ張り出したそれは小さなメモで、その上には、俺にしては丁寧な字で書かれた、そんな見出し。
ご丁寧に、その項目の下には何本かの映画のタイトルもメモされていて。
翔太のことから目を逸らすために外に出ようと思ったはずなのに、気付けばまた翔太のことで外に出ようと思っている自分に、思わず少し笑ってしまった。
実はこのお話は曲パロになっています!
ラストで元ネタの曲を公表しようと思うので、ぜひ、なんの曲が元になっているのかを考察するのも楽しんでみてほしいです。
(考察・予想はぜひコメントにも書いてほしいです!コメントお待ちしています)












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。