夜
基地の灯りは穏やかに揺れていた
巡回任務は終了
国境警戒も異常なし
殲滅部隊はそれぞれ休息に入っている
らっだぁは仮眠室
みどりは資料整理のまま机に伏せている
レウクラウドは回復薬の最終確認
コンタミは水の制御を安定させたまま静かに休んでいる
平和
何も起きていない夜
しかし――
金豚きょーは眠れなかった
冷たい夜風
屋上に立つ
黒翼は出していない
ただ、街を見下ろしている
遠くに灯り
静かな住宅街
穏やかな時間
この景色を守るために、自分は戦っている
そう思えるはずだった
だが胸の奥には、消えない記憶があった
それは数年前
まだ今より経験が浅かった頃
モンスターの大規模ではないが、突発的な出現
混乱する市街地
その中で――
一人の住民が取り残されていた
叫び声
金豚きょーは空中で反応した
即座に黒翼展開
急降下
闇の刃を生成
モンスターへ照準
判断は正確だった
だがーー
“早く終わらせなければ”
その思考が、わずかに焦りを生んだ
刃の発射角度
タイミング
ほんの一瞬のズレ
結果、モンスターは倒せた
しかし――
救助は間に合わなかった
その瞬間の静けさ
風の音
遠くの崩れる残響
自分の呼吸
そして、手
彼は何度も考えた
もっと早く
もっと正確に
もっと冷静に
だが当時の彼は、すでに最速だった
それでも、
「間に合わなかった」という事実は消えない
誰も彼を責めなかった
仲間は言った
「仕方ない。」
「君のせいじゃない。」
だが――
彼自身は納得できなかった
拳を握る
今は平和
出動回数も減っている
仲間はいる
らっだぁがいる
みどりがいる
レウクラウドがいる
コンタミがいる
一人ではない
それでも――
もしまた同じ状況が起きたら?
また焦るのではないか?
また判断が揺らぐのではないか?
その思考が、静かにストレスを押し上げる
扉が開く
いつもの軽い声
だが目は真剣
隣に並ぶ
沈黙
夜風
金豚きょーは小さく笑う
軽い口調
しかし本心
その言葉は、彼の中に少しだけ届く
金豚きょーは空を見る
星
あの日と違う空
あの戦場は、曇っていた
今は澄んでいる
世界は変わった
自分も変わった
だが――
責任感は変わらない
それは強さでもある
しかし同時に、プレッシャーにもなる
彼は深呼吸する
黒翼は出さない
ただ、静かに立つ
彼のストレスは確実に上昇している
だが崩壊ではない
今は「精神不安定」域
それでも理性は保たれている
判断力は正常
ただ――
焦りという名の影が、少しずつ濃くなっている
その言葉
金豚きょーは黙って聞く
やがて、短く言う
完全に不安が消えたわけではない
だが、共有することはできた
それは大きい
屋上の時間は終わる
二人は基地へ戻る
夜は静か
平和
だが物語は、確実に転換点へ向かっている
ストレス値
らっだぁ:33
みどり:31
金豚きょー:68
レウクラウド:42
コンタミ:39












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!