最後に来たのは。
💛「…佐久間。」
💗「…照。」
恋人である俺のところだった。
💛「…佐久間、もうすぐ……死ぬの?」
💗「…うん。」
死ぬの?なんて。
できれば一生言いたくなかった。
でも、終わりを知ってないと。
時間を無駄には出来ない。
💗「…もう、時間もないから。
……聞いて。」
苦しそうに顔を歪める君。
💗「…俺、照が好き。大好き。愛してるよ。」
ツゥと、頬を伝って、
💗「叶うなら、ずっと一緒にいたかった。
でも…ごめん。」
ポタリと、涙がこぼれ落ちた。
…そんな顔、しないで。
嫌だ。
💗「ごめんっ…ごめんねっ…」
認めない。
認めたくない。
…最後に見たのが泣き顔なんて。
口を開くのに、声が出ない。
泣きたいのに、涙が出ない。
謝って泣く君に、手を伸ばした。
💛「…っ、………」
佐久間のせいじゃない。
謝らないで。
最後くらい、笑っていて。
💛「俺を」
…そこで言葉を切った。
このままだと、俺は佐久間の足を引っ張る。
…もうこれ以上、辛い思いをさせるなんてごめんだ。
💗「……俺は、桜になる。」
ふいに佐久間は、空を見上げた。
💗「俺は花になって、幹になって、照を見てるよ。
だから…」
どうか、幸せでいて
最後に見たのは
佐久間のピンク色の髪が、ふわりと揺れて。
桜の花に。
佐久間の体がふわりと浮いて。
桜の幹に。
そこに何事もなかったかのように咲き誇る、
大きな
大きな
桜の木だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。