1週間に1回、病院前に公園で会うことは、俺たちの決まりのようになっていた。
何度も会っているうちに、互いを「ジミニヒョン」「ジョングガ」と呼び合うほどにもなった。
時に、ジミニヒョンは歌を歌ってくれたりもした。
ダンスもできると言い、昔覚えたというものを披露してくれた。
現代舞踊を一時期習っていたらしく、その時に覚えたものらしい。
目が見えなくても文字はある程度書けるだとか、
季節は気温と匂いで感じてるだとか、
そういうことも教えてくれた。
今日も「楽しみだな」なんて車椅子を進めた。
そう呼ぶと、いつもと同じように嬉しそうに手を振られる。
花が咲いたような笑顔が可愛らしくて、俺も自然と笑顔になる。
そう言って互いに手を握る。
あの時からそれが挨拶となって身についた。
もうとっくに冬になり、冷たくなった空気に当てられたからか、
ジミニヒョンの手はとても冷えていた。
「すみません、お待たせして…手が冷たくなっちゃいましたね…」
「ううん、大丈夫だよ。
ジョングガこそ、わざわざここまで車椅子こいで来るの、手痛くなるでしょ。」
「ずっとこいでるので、もうなれましたよ。」
「そっか、でも無理はしないでね」
そう言って微笑む彼とまた20分の会話が始まる。
ふと、ジミニヒョンは遠慮気味な表情になった。
俺がそう聞くと、
ジミニヒョンは少し口ごもって、躊躇う素振りを見せた。
正直、出会った時から気になっていた。
目が見えない理由。
でも、俺から聞くのは違うと思って気にしないようにしていた。
話してくれるのは嬉しい。
興味深いことでもある。
でも、聞いてしまったら、ジミニヒョンの暗い過去が見える気がして、
ジミニヒョンに辛いことを思い出させるんじゃないかって、
少し気が引ける。
でも話す気になってくれたから
しっかり聞いておこう。
Next.
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。