" あのね "
そう口を開いたジミニヒョンの声は少し震えていた。
一度深呼吸をして、
ジミニヒョンは目が見えない理由を話し始めた。
そう言って俯いたジミニヒョンの手は
ぎゅっと握りしめられ震えていて、
それがその父親に対する怒りと恐怖ということはすぐに分かった。
- jm's memory -
おかあさん ないてる
おとうさん が おかあさん の こと いたくする
だから おかあさん ないてる
とめないと
グイグイ
バンッ
ボコッボコッ
ボコッボコッボコッ
ガシャンッ パリーンッ
ポタッ ポタッ……
いたい
いたいよ
おめめが みえない
いたいよ
ピンポーン ガチャ
ボコッボコッ
いたいよ
こわいよ
だれか…
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昔あったことを話してる間、
ジミニヒョンはずっと手が震えていた
でもきっと、俺を不安にさせまいと
たまに笑顔になりながら話してくれた
決していい思い出じゃないのに
我慢していたものが零れる
ジミニヒョンには気づかれないよう
息を殺して涙を流す
するとジミニヒョンは、俺の手に手を重ね
腕を伝って、ゆっくりと俺の頬を包んだ
なんで分かってしまうんだ
俺はジミニヒョンのことが見えてて、
それでもジミニヒョンの辛い過去に気づけなかった
でもジミニヒョンは、
俺が泣いてることにすぐに気づいた
俺のことが見えないのに
「大丈夫」
そう言って俺の頬を両手で包み、
おでこ同士をくっつけた
何度も何度も、
「大丈夫、大丈夫」と言って
俺の頭を撫でた
きっと彼はこうして欲しかったんだ
幼い頃から、ずっと
こうやって、何度も安心させて欲しかったんだ
暗闇の中でひとりぼっちの天使みたいに
寂しくて、怖かったから
Next.
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!