私は駐輪所に向かって歩いていた。
途中、陸上部が練習しているグラウンドを通る。
ふと足を止めて、練習風景を眺めた。
そして、そっと目を閉じた…。
いつも、追い風が私を見方してくれた。
ふわっと風に背中を押されて、私は走り出す。
目線より高いバーを越えるときに見える空を…
高い、高い空を見るために私は飛ぶ。
それが私の世界だった。
跳躍した時に自分に羽が生えたような不思議な感覚。
鳥になれたような…そんな気分だった。
心地良かった。
私はそっと目を開けた。
俺は練習中にコーチに体育館の外に呼び出された。
珍しいな…俺なんかやらかしたか??
そう言ってコーチはその入部希望届を俺に見せた。
そこに書かれていたのは…
入部希望届
3年5組
あなたの名字あなたの下の名前
志望理由
マネージャーとして全国に行くチームを支える為。
俺はあなたの名字の入部希望届を握りしめ全力で走った。
今、どこにいる?!教室か?!図書室か?!いや、もう帰る頃か?!
とりあえずまだ校内にいればいい!!
駐輪所にあいつのチャリがあればまだ帰ってない!!
咄嗟にそう考え駐輪所に向かって走った。
陸上部のグラウンドから少し離れたところにあなたの名字の姿を見つけた。
真っ直ぐ前を向いて陸上部の練習を見ていた。
その顔はどこか寂しげだったが、清々しさも感じた。
俺は自分が握りしめたせいでクシャっとなったあなたの名字の入部希望届を見せた。
俺は息を整えながら…
あぁ、お前ってほんとに真っ直ぐないい目をするんだな。
この時を待ってたよ、ホントに…。
俺はスっと手を差し出した。
あなたの名字も手を差し出し、俺らは握手をした。
小さくて強く握ってしまったら壊れちまいそうなあなたの名字の手。
これからずっと側に居ろ…。
俺たちの側に…。
そして…
俺の側に…。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。