お互い黙ってただボーッとしてるといきなり大瀬くんがこちらに向き合いそう言ってきた
慌てて答える
でもこれは嘘でも気を使ったからでもない
本心から私が大瀬くんといたいから
そう言うと大瀬くんはおもむろに私の手を取り歩き出した
どこへ連れてかれるんだろう?
私たちは電車に乗った
何度か乗り換えもしてだいぶ遠くへ来た
あたりも暗くなり少しだけ不安になった
でも大瀬くんの目には一切の不安は見えない
それだからか、私も心のどこかで大丈夫だと思った
カタンカタンと電車が揺れる
心地いいのに眠くないのは、少しだけ非現実的なことをしているからだろうか?
大瀬くんに手を差し出され、私は迷わずその手を取った
暗闇を歩く大瀬くんを見て何かから逃げてるみたいだった
まるで私たち2人だけの逃避行
しばらくするとザザァっという波の音がした
そして私たちは波が足にかかるかかからないかの狭間に座り、大瀬くんの話を聞いた
ふみやくんが何度も波に流されたこと
理解さんが水着の女の人に顔を赤くしたこと
猿川くんが優しくしてくれたこと
そしてスイカ割りを一番楽しみにしてたこと
依央利くんに水を押し付けられたりしたこと
その後みんなでお祭りに行ったこと
その話をしている時の大瀬くんの顔を、私は一生忘れることが出来ないだろう
暗くてよく見えないけど大瀬くんの顔は真剣そのものだった
あれからしばらく浜辺を2人で歩いた
月明かりを頼りに浜辺を見渡す
静寂に包まれる浜辺は、昼間とは打って変わって人一人いない
私の言葉も並に飲まれてしまいそうだ
波の音が大きい
大瀬くんの言葉を取りこぼさないように聞こうとすると他の音も自然と入ってくる
潮風に吹かれて髪が顔にかかる
大瀬くんの顔がよく見えない
おもむろに手を出すとコロッと何かが転がる
見ると水色のシーグラスだった
大瀬くんが石言葉を言った意味が何なのか分からない
けど…
そんな告白にも似た言葉を無意識に口から吐いていた
水色のシーグラスは月明かりが反射して黄色に光る
まるで大瀬くんの瞳のように
それ以上何かを話すことは無かった
話さなくても、気持ちが分かった
いや、わかる気がしていただけかもしれない
それでも私は、大瀬くんの手を絶対に離さなかった
帰ったら依央利くんや理解さんに怒られちゃうかな
それでもいいや、2人で怒られよう
こうして私たちの短い逃避行は幕を閉じた
読んでいただきありがとうございます!













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。