山口「ツッキー!部活行こう!」
放課後になると、直ぐに山口が来るのはもういつものこと。
『…はぁ、山口うるさいんだけど。ただでさえ暑いって言うのにさらに暑くしないでくれる。』
そしていつものように僕は山口に悪態をつく。
山口は悪びれた様子を見せず、
山口「ごめんツッキー」
と言った。
そろそろこのやりとりをやめたいと思うけれど、僕たちの習慣になっているみたいで簡単にはやめれない。
そんないつもの日常。
変わりばえのない、くだらない日常。そう思ってた。
山口「じゃ、いこっか」
ポケットに手を突っ込み、なんとなく窓側を見た。
群青色の空に真っ白の入道雲が際立つ。
ふと、視線がぶつかる。
ぷいっと視線をずらされた。
4月の頃、僕がやったことと同じだ。
『…』
目を逸らされても、何故か目が離せなかった。
山口「ツッキー?麗紅くん…いや、さん…?…えぇーと……み、見てるの?」
敬称に迷ったらしく、少しつっかえたが僕にそう問うた。
『…別に。ごめん、行こ』
山口に指摘され、やっと目をそらせた僕は少し前にいる山口を追いかける。
(…少し違う日常。)
なんて、僕にしては変な事を考えるていると思うが、その言葉が僕の中でしっくりと来た。
やっぱり今日は少し違うのかもしれない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。