第23話

第二十三話
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2024/09/14 11:00 更新

晴れていた空が突然暗くなって
雷雨になったかと思えば、
今はすっかりやんで
穏やかな光が雲間から差し込んでいる。

めまぐるしい天候の変化に、
俺は呆然と窓の外を眺めていた。
黒月 想
黒月 想
(さっきまでの雷雨は何だったんだ?
通り雨……?)
折原 成
折原 成
……お前は
抱きしめていた腕の中で、折原が動いた。

泣いた後の真っ赤な目。
その目は、不機嫌さも何もない、
迷子の子供のような目だった。
折原 成
折原 成
お前は、この物語が好きなのか?
小さく問いかけられた言葉。

俺はすぐに頷いた。
黒月 想
黒月 想
大好き。
めっちゃ好き
黒月 想
黒月 想
だって、俺は
この物語に救われたんだ
素直な気持ちを言葉をそのまま伝えた。
ここは深く考えないで言った方が
いいと思ったから。
黒月 想
黒月 想
お前だって知ってるだろ?
俺、いじめられてたんだよ。
助けてくれるやつもいなくて、
ずっとひとりだった
黒月 想
黒月 想
孤独だった。
楽になりたいって、思ったこともある。
でも、俺は生きてた
黒月 想
黒月 想
俺には『ナチュラルデイズ』があったから
折原 成
折原 成
……それが好きだから、生きてたって?
黒月 想
黒月 想
まぁ単純に続きが読みたいって
感情もあったけど……。
それも立派な生きる理由だろ?
黒月 想
黒月 想
それだけじゃない。
俺は、『ナチュラルデイズ』に
寄り添ってもらってたんだ
黒月 想
黒月 想
独りじゃなかった
折原 成
折原 成
独りじゃなかった……か
黒月 想
黒月 想
何があっても立ち上がる三葉も、
言いたいことをはっきり言う真斗も、
俺の傍にいてくれるような気がしてたんだ
黒月 想
黒月 想
一緒に物語を歩んでいる気がしてた
黒月 想
黒月 想
『ナチュラルデイズ』を通して、
作者の花織ルラ先生も
傍に居てくれてる気がした
折原 成
折原 成
作者も?
黒月 想
黒月 想
そう。
だって、三葉たちの言葉は
全部花織ルラ先生が生み出したものだろ?
黒月 想
黒月 想
だから二人を通して先生にも
「傍に居る」って、
言ってもらえた気がしたんだ
折原 成
折原 成
…………
黒月 想
黒月 想
だから、俺は生きてた
黒月 想
黒月 想
独りじゃなかったから。
『ナチュラルデイズ』があったから
宣言するように、
はっきりと言い放つ。
なんて言われようと、
俺が『ナチュラルデイズ』に救われていたのは本当。
ずっと寄り添ってもらっていたんだ。
折原 成
折原 成
そうか
呟いた折原は、
立ち上がって窓の外を見ると目を細めた。

何があるのだろう?

そう思って俺も同じ方向を見ると、
そこには並んで歩く三葉と真斗の姿。

嬉しそうに笑う三葉と、
そんな三葉を優しく見つめる真斗がいた。

二人は、しっかり手を繋いでいる。
黒月 想
黒月 想
(もしかして……付き合ったのかな)
漫画で真斗は三葉の強さに惹かれていた。
この世界でも、
展開は違えど諦めずにアタックを続けた三葉の前向きさと強さに、
真斗は惹かれたのかもしれない。
黒月 想
黒月 想
(よかった……二人とも、
幸せそうに笑ってる)
幸せを具現化したような二人を見守っていると、
ふ、と笑う声。
俺の隣では、
同じく二人を見ていた折原が微笑んでいた。
折原 成
折原 成
……俺がどれだけ壊そうとしても、
勝手に動いてくんだな……
黒月 想
黒月 想
え?
物騒な言葉とは裏腹に、ひどく優しい声だった。
首を傾げると、折原の視線が俺に向けられた。

今まで向けられたことのない、
優しく穏やかな眼差し。
折原 成
折原 成
この物語はもう、
俺だけのものじゃないんだな
意味深なその言葉の真意を尋ねようとした。




だけど、口を開く前に
ジジッとの目の前にノイズがかかって、
俺の意識はぶつりと途絶えてしまった。

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