第26話

第二十六話
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2024/10/05 11:00 更新
折原成
折原成
(やってられっかよ、
こんなこと)

どんどん俺の理想から
かけ離れた作品になっていく
『ナチュラルデイズ』。

プロットに俺の想いを盛り込もうとしても
編集者にチェックされ、
残されるのはほんのわずかだけ。
こんなの俺の作品じゃない。
俺が描きたかった世界じゃない。
折原成
折原成
(こんなくそみたいな世界を描くために
漫画家になったわけじゃねぇのに)

スマホと財布だけをもって家を飛び出した。
行く当てなんてなかったけど、
家にいたくはなかった。
連載の〆切は迫っていたが、
こんなんじゃ続きなんて描けるはずもない。


とにかく逃げ出したくて、
俺は目的もなく歩き続けていた。

すれ違う人たちが楽しそうに話しているのを見て、
舌打ちがこぼれそうになる。

なんでみんな、そんなに楽しそうなんだ。
普通に、ありのままに生きてて、
そんな風に笑えるもんなのか?
折原成
折原成
(俺が我慢すれば全部違ったのか?
……でも、そんなの俺じゃねぇ)
世界から自分の全てが否定されているような気がして、
息がつまる。


お前が間違ってるから、こうなった。

お前が間違ってるから、ひとりぼっちなんだ。


折原成
折原成
(……くそっ……)
逃げ出してきたはずなのに、
俺の頭を巡るのは『ナチュラルデイズ』の世界だった。

俺と同じはずなのに受け入れられる真斗。
物語を盛り上げるために用意された
胸くそ悪い展開。
折原成
折原成
(物語の中でくらい、
くそつまらん平和な世界でもいいじゃねぇか)
下手にデビューしたせいで、
それが許されなくなってしまった。
面白くなくちゃ。
そのためなら、不幸だって描かなくちゃ。

だって平気だろ?
所詮紙の上のキャラなんだから。

そう言われているような気がして本当に嫌だった。







折原成
折原成
(……あー、なんで俺ここにいんだろ)
気づけば本屋にいた。
小説や雑誌が並ぶ棚を通り過ぎて
たどり着いたのは、漫画コーナーだ。

平積みされている漫画たちは、
色んな客に取られていく。
折原成
折原成
(……俺もいつか、って
思ってたのにな)
デビューして、
WEB連載して、
人気になって書籍化して、
誰かに買われていく。
それをこの目で見たいと思っていた。

そうすれば、
俺がこの世界に認められたことになると思っていた。
折原成
折原成
(……所詮俺には無理だったんだ)


本屋に来たのは間違いだった。
早くここから出よう。
そう思ったとき。
くすくす笑う声が聞こえてきた。
それと共に誰かを馬鹿にするような会話も。
振り向けば、
棚に隠れるようにして立つ男子高校生グループ。
そして彼らの視線の先には、
同じ制服を着た一人の男子高校生がいた。
その光景を見て、すぐにピンときた。
折原成
折原成
(……タイミングわりぃな……。
なんで現実世界でも
いじめなんて見なきゃいけねぇんだよ)
一人で棚の前に立っていた男子高校生は、
躊躇った末に一冊の漫画を手に取った。
そして、それをそのまま
学生カバンの中にしまおうとする。
折原成
折原成
おい
万引きをしようとするそいつの腕を掴めば、
驚いた顔から一転、真っ青になった。

そうだよ。
お前がやろうとしてんのは犯罪行為だ。
いじめられてたとしても、
「やらない」って突っぱねられる強さがない
お前が悪い。
折原成
折原成
(あいつらも一緒に店員に突き出して……)
万引きをそそのかしていた奴らも
一緒に付き出そうとしたその時、
捕まえていた奴が逃げ出した。
折原成
折原成
おい! 待てって!
最初はただ逃がさないように
追いかけているだけだった。

だけど、途中から少しだけ焦りを感じ始めた。

だって、そいつが向かっている先は大通り。
折原成
折原成
おい! 前見ろ!
そして、そいつに向かって
突っ込んでくるトラック。
明らかに、スピードを落とさず
その高校生に向かって走っている。
折原成
折原成
チッ……!
折原成
折原成
(間に合え……!)
追いかけたせいで人が死ぬとか
目覚めが悪すぎる。
俺はめいっぱい腕を伸ばして、
その高校生の腕を掴んだ。




















ジジッ、と
ノイズがかかったような音が聞こえて目を開ける。

目の前に広がっていたのは、
学校の職員室のような場所。
折原成
折原成
…………は?
自分の母校じゃない。
だけど、俺はこの場所を知ってる。
瀬良 真斗
瀬良 真斗
先生。
体育館の鍵持ってきました
先生
おー! 今日も戸締りありがとな! 
一限で体育館使うところあれば
よかったんだけどな
瀬良 真斗
瀬良 真斗
開けっぱなしも良くないですから
折原成
折原成
(…………嘘だろ)
ここは俺が描いた『ナチュラルデイズ』の世界だ。
目の前で真斗が話している。

夢……いや、転生ってやつか?
自分で描いた漫画の世界に?

折原成
折原成
(……なんでもいいか。
ここが『ナチュラルデイズ』の世界なら
ちょうどいい)


壊してしまおう。
これが夢でも何でも、構わない。



俺の手で、
『ナチュラルデイズ』を壊してやる。

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