折原成 編
言いたいことをはっきり言うのが、
正しいと思っていた。
間違っていることは間違ってるし、
ダメなものはダメ。
そんなことも分かんねぇやつはダサいと思ってた。
そんな俺は周りから見たら異端だったらしい。
気付けば周りには誰もいなくて、
俺はひとりぼっちになっていた。
周囲の顔色を窺って、空気を読んで。
この世界では、
そういう行動が出来るやつの方が受け入れられる。
だけど、そんな俺でも認められる世界があった。
それが、漫画。
漫画にすれば自分の表現が、考えが、想いが、
たくさんの人に見てもらえて、共感してもらえる。
その世界に没頭していくのに時間はかからなかった。
そうやって何枚も何枚も描いては
SNSにあげていった。
反応を貰う度に、コメントを貰う度に、
俺はひとりじゃないって
言ってもらえているような気がした。
SNSにあげていた漫画がバズって、
出版社から連載の声がかかった。
DMで連絡が来て、実際に会って、話を聞いて。
やってきたのは、
眼鏡をかけたザ・真面目みてぇな男の編集者。
学生の頃はクラスの委員長でもやってそうなそいつは、
見た目に反して熱っぽく俺を勧誘した。
そして、俺の漫画をよく見てくれていることも分かった。
熱く語る編集者の声を聞きながら、
俺はすぐに決心した。
漫画家としてデビューできる。
今よりもっと多くの人に見てもらえる。
そしたら、本当に俺はひとりじゃなくなる。
だけど、それが間違いだった。
初めてのWEB連載としてスタートした
『ナチュラルデイズ』。
過去の俺に「おまえは一人じゃない」と
教えるために描こうとした作品。
キャラクターに自分の過去を反映させ、
でも幸せでありふれた世界を描くはずだった。
なのに。
どんどん描きたいものから
かけ離れていく『ナチュラルデイズ』。
俺の過去を反映させた真斗を、
ただただ幸せにしてやりたかっただけなのに。
真斗を、過去の俺を、
救いたかっただけなのに。
こうして『ナチュラルデイズ』は、
俺史上最大の失敗作になった。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。