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第1話

 Prologue .
945
2023/12/19 12:42
ちゅんちゅん、と鳥の柔らかな声が響いた。
森の奥深くに住む霧雨 魔理沙きりさめ  まりさは、今日も草木の間を箒で瞬く間に通ってゆく。
 チルノ .
 チルノ .
あ、魔理沙だ!
涼しい冷気を纏った妖精、チルノは、魔理沙を見つけると一目散に飛んできた。
 魔理沙 .
 魔理沙 .
おぉ、チルノか!今日は何してるんだ?
 チルノ .
 チルノ .
大ちゃんとかくれんぼしてるんだ!楽しいよ!
魔理沙の問いに、チルノはにぱっと笑って答える。
そんなチルノを見て、魔理沙も笑顔が浮かんできた。
 魔理沙 .
 魔理沙 .
そうか、頑張れよ!
 チルノ .
 チルノ .
大丈夫!あたいはさいきょーだからね!
チルノのいつもの口癖聞き、魔理沙はまたははっと笑みをこぼしながらその場を後にした。
博麗神社の巫女である博麗 霊夢はくれい れいむは、季節外れの落ち葉を箒で集めていた。
 霊夢 .
 霊夢 .
まだ夏なのに、こんなに落ち葉が落ちるなんて...
キッと、霊夢は目の前に積もった葉っぱたちを睨みつけると、1つため息をつく。
 魔理沙 .
 魔理沙 .
霊夢!今日も落ち葉集めてんのか?
 霊夢 .
 霊夢 .
しょうがないじゃない、文句ならこの落ち葉に言って。
最近、落ち葉がすごいのよと、霊夢は愚痴をぽろぽろこぼす。
そんな姿を見て、魔理沙は少し呆れた顔をしながら話に耳を傾けた。
 霊夢 .
 霊夢 .
それでね、前神社に来た人なんか...
 魔理沙 .
 魔理沙 .
はいはい
魔理沙の適当な返事に、霊夢は少し頬を膨らませた。
 霊夢 .
 霊夢 .
ねぇ、ちゃんと話聞いて
霊夢が魔理沙に話しかけようとすると、ウィン、と無機質な音が響き、沢山の目がある空間が現れた。
そしてそのスキマから出てきた女は、妖艶の笑みを浮かべている。
 紫 .
 紫 .
お話のところ悪いけど、失礼するわ。
 魔理沙 .
 魔理沙 .
なんだ、紫かよ。
なんだとは失礼ね、とケタケタ笑う紫の顔は少し焦っているようだった。
 霊夢 .
 霊夢 .
で、スキマ妖怪が博麗神社に何の用?
冷ややかな目で、霊夢は紫をじっと見つめる。
 紫 .
 紫 .
...残念だけど、ふざけている時間はあまり無いみたい。
さっきまでの笑顔が消え、紫は淡々と話しはじめた。
 霊夢 .
 霊夢 .
...結界が破られた?
ぴくり、と霊夢は眉を動かした。
幻想郷には、博麗大結界という結界があり、その結界は幻想郷を守るために存在する。
その結界が破られるということは、”異変災い“が起きる象徴なのだ。
 紫 .
 紫 .
ええ、しかも1匹ではなく複数よ。
ここまで真剣そうな紫を見るのは初めてで、霊夢も魔理沙も少し不安な気持ちになっていた。
 魔理沙 .
 魔理沙 .
わかった、人里の様子を見てくるよ。
 霊夢 .
 霊夢 .
そう、気をつけなさいよ。
霊夢と魔理沙はハイタッチを交わすと、にぱっと笑い合い、幸せそうな顔を浮かべた。
それを見た紫は、美しい瞳を静かに閉じる。
 紫 .
 紫 .
(...本当に仲が良いわね。)
 紫 .
 紫 .
(ただ、この一件で壊れてしまうかも...)
静かに空を見上げると、どこか悲しそうに目を瞑った。

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