前の話
一覧へ
次の話

第2話

#1 世界最大の都市
31
2024/06/11 07:47






Sho
ん〜……! やぁっとついたわ……


 世界最大といわれる都市。

 そこに足を踏み入れた初兎は、長旅で疲れた体を伸ばし辺りを見渡した。

Sho
ほぇ〜……全部でっかいな……


 田舎にある小さな村出身の初兎にとって、大きな都市というのは興味深いもので溢れていた。

Sho
ん……? なんやあれ、兎……?


 でっかい街でも兎とかはいるんや……と謎に関心し、しばしその兎を眺める。

 道のど真ん中で。

 そんな悪い意味で目立つ初兎に、1つの声がかかった。

???
そこのお兄さん。何やってるの?


 面白いものを見つけた、とでもいうような声色に、初兎は少しむっとしながら声のした方を向く。

Sho
ええと……兎見てました
???
兎!! あっはは、君面白いね〜
Sho
……なんですかあなた


 顔をしかめた初兎に気づいたのか、小さな露店の中で彼は笑いながら言った。

Naiko
あぁ、ごめんごめん。俺はないこ。メカニックやってるんだ〜


 ないこと名乗る桃色の青年は、先程とは打って変わって優しげに目を細める。

Sho
メカニック……整備士さん?
Naiko
そそ! まぁずっとこんな小さな店だけどね〜。お兄さんはなんていうの?
Sho
初兎、です
Naiko
初兎くん! 仲良くしよ〜
Sho
アッハイ……
Sho
(アカルイコワイ……)


 コミュ力の高いないこにびくびくし、人見知りを発動する初兎。

Naiko
初兎くんは冒険者?
Sho
はい、そうです……
Naiko
じゃあギルドだね。あっちの方いけばギルドあるよ


 ないこが指さす方向を見ると、王城が見え、その前に大きな噴水のある広場があった。

 親切なメカニックに礼を言い、教えてもらった方へと歩き出す。

Sho
(ギルド、ギルド……うわ城でっか、噴水でっか!?)


 全てのものに驚きながらギルドを探す。

 その途中で、噴水の傍でうたう吟遊詩人を見かけた。

Sho
(吟遊詩人もおるんやね〜。てか髪水色やんめっちゃ目立つ)
Sho
あっここか


 これまた大きな建物を見つけ看板を見ると、『冒険者ギルド』の文字。

 中に入ると今まで訪れたどのギルドよりも内装が豪華で、人か多くざわついていた。

 人見知りを発動しながら依頼が貼られている掲示板のようなものを見る。

 冒険者は基本的に、ギルドで魔物の討伐などの仕事を受けお金をもらったりする。

Sho
ぼちぼち武器とかも新調せんとやし……結構多めに稼がんとやばいか


 この先の旅路を考えると、この都市に滞在できるのは長くて1ヶ月。

 それまでにできる限りの金を稼ぐと共に、一緒に旅をする仲間も見つけたい。

 というかそれが最大の目的だ。

Sho
(できるだけ街の人とも交流したいんやけど……)
Sho
そーんな余裕なさそうかも……?


 とりあえず依頼を受けてからにしようとカウンターへ向かい、説明を受ける。

 依頼が多いこの街では、冒険者はS~Fのランクが振り分けられるらしい。

 依頼もその難易度によってランクが振られているため、自分のランクと同じものを受けるのが主流だとか。

 ときどき自分の実力より上の依頼を受けようとする人もいるんですよね〜、とギルドの受付嬢は困ったように笑っていた。

 初兎はそんなに戦闘が得意ではないのに加え歴が浅いため、Eランクと判定された。

Sho
どれにしよ〜……とりま薬草採取でも行ってくるか


 最初の依頼なので、比較的簡単な薬草採取を選ぶ。

 薬草採取は、地味な仕事なので人気はない。

 だが、どのような薬草が生えているかなどを知れるため初兎としてはとてもありがたいものだった。

Sho
んっと、あーこれか……結構見つけづらいやつ〜


 思ったよりもめんどそう、とぼやきながらギルドを出、門へと向かう。

???
……っ、あの!
Sho
……? 僕ですか?


 声をかけられ振り返ると、先程噴水でうたっていた吟遊詩人がいた。

Hotoke
はい! あ、僕ほとけっていいます!


 ほとけと名乗った人物はにこっと明るい笑みを浮かべる。

 見ているとほわほわするような、そんな笑顔だ。

Hotoke
あの、ちょっとお願いがあって……薬草採取にいかれるんですよね?
Sho
はい、そうですけど……
Sho
(急になんなんやろ……まさか、自分の分も取ってこいとかそういう感じ!?)


 勝手な想像で1人身を縮こまらせていると、ほとけが真剣な眼差しで言った。

Hotoke
僕もついていってもいいですか?
Sho
へ?
Hotoke
えあ、えっと、僕全然薬草のこととかわからなくて……教えてもらえたらなーとか思ったんですけど、だめですかね……


 わたわたと大きな動きで言うほとけのおかげで緊張が解けた初兎は、目をさまよわせた。

 初対面の人が苦手な自分が、ものを教えられるのかと。

 しかし、話しやすそうな雰囲気のほとけならば大丈夫かもしれない、という考えに至り引き受けることにした。

Sho
わ、かりました。教えられることは少ないと思いますけど……
Hotoke
! ほ、ほんとですか?


 ほとけの顔がぱあっと明るくなる。

Sho
じゃあ、いきます……か
Hotoke
はいっ!
Hotoke
えーねぇねぇ初兎ちゃ〜ん! これ何〜?
Sho
ん〜? あーそれ毒あるから触らん方がええで。かぶれるし
Hotoke
ありがとー!


 2人で森へと出てから1時間。

 ほとけの話しやすさと明るさのおかげで、2人は『いむくん』『初兎ちゃん』と呼び合うほどに仲良くなっていた。

Hotoke
いや〜それにしても声かけてよかったよ〜。僕薬草のことなーんにもわかんないから
Sho
いむくん吟遊詩人やから旅するやんな。今までどうしてたん?
Hotoke
あー、僕治癒魔法と防御魔法だけは使えるからさ!


 それ以外はからっきしだけど〜、と笑うほとけ。

Sho
治癒と防御……? えそれ特殊魔法じゃんなんで使えるん!?
Hotoke
いやぁー
Sho
五大魔法は使えへんのやろ? ますます不思議なんやけど……
Hotoke
えー……ききたい?
Sho
ききたい
Hotoke
あははっ、即答じゃん!


 ほとけが笑いながら地面に座る。

 その隣に初兎も腰を下ろしきく体制をとった。

Hotoke
んーっと……初兎ちゃんは吟遊詩人の村って知ってる?
Sho
あー、吟遊詩人がいっぱいいる村やっけ?
Hotoke
そそ!


 本当の名前は違うが、その村出身の者は大半が吟遊詩人になるためそう呼ばれている。

 争いごとなどとは無縁で、村には詩が溢れているらしい。

 初兎が1度は行ってみたいと思う村の1つだ。

Hotoke
僕そこの出身で、もうすっごい平和なの!
Sho
へ〜……魔物とかも出ないん?
Hotoke
そう! だから戦える人が全然いなくて。何歳の頃だったかは忘れたけど、村に盗賊が来たことあるんだよね


 ほとけが地面の草をいじりながら語る。

Hotoke
さっきも言った通り戦える人なんていなかったからもうやばいわけ! 逃げるしかないし、家は壊されるし……
Sho
えだいじょぶだったんそれ……
Hotoke
ちょうど村に来てた魔法使いの人が助けてくれたの。で、このままじゃやばいよなーってなって、その魔法使いさんに治癒魔法と防御魔法教えてもらったんだよね!
Sho
そこでなぜ特殊魔法にいく
Hotoke
戦うのいやだったんだって。でも魔法の知識ついてきた今ならわかるけど、ほんとバカだよ……


 少し学べば誰でも使える五大魔法より断然特殊魔法の方が難しい。

 その上治癒や防御など、特殊魔法内でもトップレベルで難しいものだ。

 それを人に教えたというのだから、そのときの魔法使いは相当力があるのだろう。

Hotoke
でも対抗手段だけもってたって知識がないとダメじゃない? 防御魔法貫通してくるやつだってあるかもだし


 だから旅することにしたんだ〜、とほとけが言った。

Hotoke
旅で色んなこと知れたら、村を守れるでしょ?
Sho
ほぇ〜……いむくんすごいなぁ
Hotoke
えへへっ。でも僕1人じゃ限界あるから、仲間がほしいんだよね
Sho
仲間……
Sho
(もしかしたら……)


 仲間を探しているのは初兎も同じ。

 ほとけを誘えば、了承してくれるかもしれない。

 防御魔法と治癒魔法が使える人というのはあまりいないが、パーティーに1人いるだけで安心感が違うのだ。

 それに、人見知りな自分でもほとけとなら一緒に楽しく旅をできるのではないか。

 そう思ったが、断られたらどうしようという考えが浮かび、少し悩む。

Sho
(……悩んでたってしゃあないやんな)
Sho
なぁ、いむくん
Hotoke
どしたの?
Sho
僕と一緒に旅してくれへん?
Hotoke
へ……?


 緊張しながら言葉を紡ぐ。

Sho
今、話したりしてて……いむくんと一緒に、旅したいなって……治癒とか使えるのもそうやけど、話してて楽しかったから
Hotoke
……
Sho
どう、かな……?
Hotoke
……僕でいいの?
Sho
いむくんがええ
Hotoke
戦えないよ?
Sho
僕が守るし
Hotoke
……そっかぁ。なら、僕も一緒に行きたいな
Sho
! ほ、ほんま!?
Hotoke
うん。僕も初兎ちゃんと話してて楽しかったし、もっと一緒にいたいし


 これからよろしくね! と笑うほとけに緊張が解け座り込んでしまった。

Hotoke
ええどうしたの!
Sho
いや、よかったーって思って……
Hotoke
なんかプロポーズ後の人みたいだね
Sho
違うからぁ! いむくんと結婚とかないし!!
Hotoke
それはひどくない!?!?


 2人でひとしきり騒いだ後、取った薬草を持って森を出る。

Sho
パーティーって6人制がおすすめなんやっけ?
Hotoke
確かそうだよね
Sho
あと4人かぁ〜……前衛と、後衛と……補助系の人もいた方がええやんな


 どんな人がいいのかを考えていると、ほとけが思いついたという風に手を叩いた。

Hotoke
あっ! 僕、いい人知ってるかも!!
Sho
まじ?
Hotoke
うん! 一緒に来てくれるかはわかんないけど……魔法使いの人だよ!





NEXT ⤿

プリ小説オーディオドラマ