練習が終わり解散すると、まっすぐ最寄りの薬局へと向かった。風邪薬やスポーツドリンク、プリンをカゴに入れ、冷えピタ、体温計、使い捨てのマスクなど、まるで「看病セット」を揃えるかのように、次々と必要なものを買い込んでいく。
普段の自分なら、こんなに甲斐甲斐しくなることなんてないのに、彼女のためだと思うと自然と体が動いた。
両手にレジ袋を下げて、彼女の玄関の前に立つ。少しばかり緊張しながら、インターホンを鳴らした。いつも元気な彼女の声が、今日はどんな風に聞こえるだろうか。
「……はい」
か細い、少し掠れた声が聞こえて、胸が締め付けられる。自分が来たことで無理をさせることになるのでは…と一瞬罪悪感がよぎった。
「僕だけど。お見舞いきたよ〜」
「え…ハン?」
驚いたような声が聞こえた後、ガチャリと鍵を開ける音がした。ゆっくりと開いた扉の向こうには、パジャマ姿の彼女。
いつもはきちんとメイクをして、おしゃれな服を着こなし、バリバリ働いている彼女からは想像もつかない、無防備な姿をしている。
冷えピタをおでこにつけ、寝起きのせいか少しぼさついた髪が、幼さを引き立てる。
そんな彼女の姿を見た瞬間、心臓が大きく跳ね上がった。
(やっば…何これ、可愛すぎでしょ…)
思わず抱きつきそうになったが、なんとか堪える。熱で少し潤んだ瞳が自分を真っ直ぐ見上げていて、その視線に、さらに心臓の鼓動が速くなるのを感じた。
「あ、私……」
慌てて前髪を直そうとする彼女の手を取った。熱を帯びた指先が、手のひらにじんわりと温かさを伝えてくる。
「いいから。体調はどう?…とりあえず、中に入ってもいいかな?」
彼女の背中にそっと手を添え、ゆっくりと部屋の中へ促した。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。