お久しぶりです
大変お待たせいたしました
シャドーは幸いすぐに目を覚ました。
だが、様子が少しおかしかった。
何かを恐れるように壁の角に寄り、両腕で自分を守るように自身を抱き締める。
リアン達を見る目には、明らかな恐怖が宿っていた。
リアンは扉を開けて外に出ろとハンドサインをする。
全員が出た後、リアンはビャクヤとのすれ違い様に小さく呟いた。
それだけやり取りをして、リアンは出ていった。
ビャクヤはできるだけ相手を刺激しないようゆっくりとベットに近づいた。
シャドーが口を開く。
僕はその声と口調に違和感を覚えた。
随分と他人行儀な喋り方。
声は高めの声と低めの声が二重に重なっているように聞こえる。
ちょうど、ライトとシャドーのような・・・
そこまで考えて僕はゾッとした。
研究所にいた頃から懸念はされていた。
でも、本当に起こる確証はどこにもなかった。
おそらくこれを知っているのは僕だけ。
リアン達にどう伝えればいいだろうか。
やっぱり・・・最悪の事態が起こってしまった。
でもここで取り乱しちゃダメだ。
一番不安なのはこの子なんだから、僕がしっかりしないと。
僕が手を差し出すと、モニカはおずおずと手を握り返した。
少しは気を許してくれていると言う認識でいいだろう。
僕はモニカを見る。
記憶喪失、名前の変化、人格の複重、これらの症状は研究所で研究員が話しているのを聞いたことがある。
ちょうど隔離部屋に2人で閉じ込められていた時だったから、リアンたちは知らないだろう。
僕はモニカと目を合わせ、怖がらせないよう一言一言しっかりと優しく伝えた。
ライトもそれを理解してくれたようで、ゆっくりと頷く。
僕はそれを確認してから、外で待機しているリアンたちに向かって合図を送った。
すると扉が開いてリアンたちが中に入ってくる。
僕はリアンたちに状況を手早く説明した。
兄弟同士で少しの話し合いを経て、ひとまずこちら側での方針を決める。
次に太宰たちに向き直り、こちらの方針について説明を始めた。
中也のもっともな疑問に、僕は毅然として答える。
おそらく他の兄弟たちも気にしてるだろうから。
そこで一度会話が止まり、静寂が訪れる。
そんな僕たちをモニカは心配そうに見ていた。
すると、クレアが手を挙げた。
↑バカ1
↑バカ2
↑バカ3
コウヤとアサの方を見ると、2人は千切れんばかりに首を横に振っていた。
クレアは一つため息を吐いて眉間を抑える。
すると全員ニコニコとこちらを向いた。
残りたいとは思っていたが、他の兄弟から推薦されるとは思っておらず狼狽える。
何人もから推薦されだんだんと退路が塞がれていくのが分かった。
すると周りから感嘆の声と拍手が聞こえてきた。
そんな他愛無い会話をしていたため、僕たちはモニカがすぐ近くまで歩いてきたことに気が付かなかった。
モニカはそっと僕の袖を掴んで引っ張った。
僕はモニカに目線を合わせた。
そう言うと、モニカは少し表情を明るくして頷いた。
将来・・・・将来、か。
考えたこともなかった。
ずっと死ぬことばかり考えていて、成人した後なんてないと思っていたから。
そっか。
ズルズルと生きるにしても、どうするのか考えないといけないんだ。
黙ってしまった僕を心配して、カコが声をかけてきた。
僕がポツリと呟いたと言葉は、隣に居たカコにしか聞こえなかったみたいだ。
でも、カコは他の兄弟に言いふらすでもなく、黙って話を変えてくれた。
カコの一言で、その場にいた全員がテキパキと動き始める。
捜索班は持ち物の準備や場所の確認。
守備班は自身の魔法を発動させたりトラップを仕掛けに行ったりとそれぞれが慌ただしく動き回る。
そんな中、僕はモニカの手を引いて先ほどのベットに行く。
モニカをベットの淵に座らせて、僕も隣に座った。
そう言ってシャーペンとメモ帳を取り出して渡すと、モニカはそれを受け取ってしばし考えた後紙面にペンを走らせ始めた。
ユメハside
聞き込み班
私たちはアオリから貰った笹城の写真を持って街ゆく人々に聞き込みをしていた。
今の所収穫はゼロだ。
しかし、ここはNBI捜査部上等捜査官としての腕の見せ所だ。
おそらくユウムも同じことを思ってるだろう。
そう思って再び聞き込みをしようと一歩踏み出した瞬間、後ろから悲鳴が上がる。
私は弾かれたように振り返って走り出す。
追うのは血のついた包丁を持って逃亡する覆面の男だ。
もちろん本気の私(時速30km)から逃げ切れるわけもなく、犯人はあえなく私に追いつかれた。
相手は私に向かって包丁を振るうが、そんな遅い攻撃なんて簡単に見切れる。
腹への刺突を体を捻って避け、腕を掴んで捻りあげる。
犯人は苦悶の表情を浮かべて包丁を取り落とした。
凶器を失った犯人を組み伏せて取り押さえた。
私は即座にハンカチで柄を持つと、犯人から遠くに包丁を除ける。
そして腕時計で時刻を確認した。
私は懐から手錠を取り出して犯人の腕にかけた。
すると周りから歓声と喝采が巻き起こる。
その瞬間ハッとする。
今の私が居るのはキサラギでなければ、NBIがある次元でもない。
勝手に逮捕も補導もできない。
でも・・・どうしよう。
つい反射で取り押さえてしまったが、このまま野放しにはできない。
それに先ほどの行動で目立ち過ぎてしまった。
今から警察に通報しようにも何かしらややこしいことになる。
もし事情聴取でもされれば戸籍がない事がばれて不審に思われてしまう。
いや、もしかすればあそこに電話すれば・・・。
まさか私がこんな犯罪じみたことをする羽目になるなんて、一生の屈辱だ。
私は懐から携帯電話を取り出すと、兄弟に現状とこれからすることを連絡した後、とある場所に電話をかけ始めた。
プルルルルッ
プルルルルッ
プルルルルッ
3コール目で相手が出る。
それを皮切りに通話は切れた。
私はスマホを懐にしまう。
あとは到着を待つだけだ。
数十分待っていると、一つの車が目の前に止まった。
扉が開き、中からメガネの青年が出てくる。
あえて“FBI”と答える。
これで怪しまれはしないはず。
その後念のためと書類を渡され、その書類の項目を書き込む。
できればあまり個人情報を残したくはないが、これも犯罪を無くすため。
メガネの青年は犯人を連れて車に乗り込み去っていった。
次は被害者のへの対応だ。
異能力のある世界では魔法を使っても不自然には思われないだろう。
刺された被害者は誰かが呼んだ救急隊員に手当てをされていた。
救急隊員をかき分けて被害者の体に手を当てる。
腹部に刺し傷が一つ、二の腕に切り付けられた跡が二つ。
出血量はまだそこまで多くない。
敗血症の心配はないだろうが、感染症や破傷風のリスクがある。
私が直した方が安心だ。
私が”修復“を使えば、見る見るうちにケガが塞がり始める。
それを見ていた救急隊員からどよめきが起こった。
私がそう言って笹城の写真を見せると、被害者の女性は小さく目を見開いた。
そう言った後、少ししてから被害者の女性は声を上げた。
礼儀よく一礼した後、私は踵を返してユウムを探す。
確か先ほどの連絡の時には近くにいると言っていたから、一度ユウムと合流して情報を共有しよう。
あまり電子上に情報を残しておくのは得策じゃない。
そう思い、ユウムを探すために周囲を見渡すとそこには一つの端末が落ちていた。
ここは確か先ほど犯人が被害者を刺した場所。
近くに血痕が残っている。
私がそれを拾い上げると、画面は割れてしまっていた。
軽く振ってみるとカラカラと音がするため、おそらく電子版か何かのパーツが外れてしまっているだろう。
これは修理の必要がありそうだ。
指紋が消えないようジップロックに入れてウェストポーチに端末を仕舞う。
ふと十字路の右の道を見れば、特徴的な低身長のオレンジ色が見えた。
するとユウムは少し考え込んでから首を横に振った。
手を振ってユウムと別れると、私は一直線に拠点へ向かって歩き始めた。
それを見上げると数刻前まで青かった空が、夕刻に差し掛かり緋色に変わっていた。
謝罪
ほんっとに遅くなってすいません!
いや、ちょっとスランプになってしまいまして。
あ、今回の小ネタです。
ユメハとユウムは2人とも組織は違えど治安維持機構に所属してるんですが、ユメハはワーカホリックで残業しまくり、ユウムは犯罪大嫌いすぎてオフの日でも見つけたらとっ捕まえて警察に突き出します。
あと、NBIはFBIと違って階級制度があるんですよね。
作中でユメハが言ってたのはこれの階級です。
一応ユメハNBIのエースなんですけど、昇格もそんな簡単じゃないのとNBIに入ってまだ3年なんで階級があんまり高くないのはそれが理由です。
機構長官
機構役員
局長←シアンはここ
部署長官
課長
上等官
中等官
下等官
隊員監督
上等隊員←ユメハはここ
中等隊員←デリア(未登場)はここ
下等隊員 ↑高い
尉官監督 難易度的には中間くらい
上尉官←ルア(未登場)はここ ↓低い
中尉官
下尉官
平隊員
みたいな感じです。
ちなみに階級と役職は関係ないので、上等官の情報捜査官とかカウンセラーとかもいます。
自己紹介の場合は『上等情報捜査官の〇〇です。』的な感じで階級の”官“の部分を省略して役職とくっつけて言います。






























編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!