その日の放課後。帰りの路面電車の中で廉はひたすら上機嫌だった。
美桜と海人は少し離れた席から、廉とあなたの様子を見守っている。
美桜がマジギレしているのを見て、海人はくすっと笑う。
言われてみればそうだな・・・・・・と美桜は思った。
廉は元々独占欲が強くて、ヤキモチ焼きの男だ。
ちょっと前ならば、あなたに自分以外の男が近づいただけで冷たい態度を取っていたはず。
美桜と海人は変わりそうで変わらない二人の関係を、じれったく思う。
そして問題の化学の実験の日が、やってきた。
実験の直前、廉と海斗は階段のところですれ違った。
いつもと違って廉は制服の上に白衣を来ている。
海人はすぐに廉の様子がおかしなことに気づいた。
派手に咳き込んでいるし、顔色も悪い。
案の定、廉のおでこに手を当てると、燃えるように熱かった。
海斗は廉の体を心配して、帰ることを勧めるが。
と、廉はゲホゲホと咳き込みながら、化学室に向かう。
海斗は意地っ張りな親友に、心の中でエールを送った。
素直じゃないけど、本当は心根の優しい奴だと知っているから。
NEXT
短い…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。