彼の口から出た言葉を理解するのに時間がかかる。
だって、そんなこと、ありえないって、夢かもしれないって、思わずにはいられないから。
彼女の笑顔に目を奪われて...思わず、言葉が漏れてしまった。
そして真っ先に生まれたのは...後悔の感情。
俺の一方的な気持ちは、きっと今後のチームとしての活動への邪魔になってしまう。
それに...小豆沢にもきっと迷惑をかけてしまうだろうから。
「長居して悪かった。風邪をひかないようにな。」
そう言い残して青柳くんは足早にその場から立ち去ろうとした。
...けれど、私はそれを黙って見ていられるはずがなかった。
彼の後ろを追いかけて、その少し冷たい左手を、両手でぎゅっと掴んだ。
自分でもびっくりするぐらい、その両手には力がこもる。
呼び止めておいて、なにを言えば良いのかなんて考えていなかった。
でも、ただ一つ、自分の中でやっとはっきり分かったのは青柳くんへの気持ち。
彼に伝えたい言葉が、自然と口から飛び出していく。
きっと、ううん、絶対に、聞き間違いなんかじゃなかった。
最初は信じられなかったけど、だけど、とっても嬉しかったんだよ。
だから....______
その瞬間...___________________
青柳くんが、私を抱きしめた。
青柳くんが優しく笑いながら、さらにぎゅっと私の体を抱きしめる。
あまりにも突然のことで、こはねは既にキャパオーバー寸前だった。
これって、ハ、ハグだよね...?私、今、青柳くんに抱きしめられてる...?
心臓の音が自分でも分かるくらいうるさい。どうしよう、青柳くんに聞こえちゃう...。
でも、そんなことより...!
その3文字を聞くたびに、胸が高鳴って、熱くなって、全身の力が抜けてしまいそう。
体じゅういっぱいが幸せに包まれて、頭がクラクラする。
必死になって喋るこはねを愛おしそうに見つめながら、冬弥は優しく髪を撫でた。
冬弥は優しい表情のまま、こはねの瞳をじっと見つめて言葉を続ける。
ぽ、ぽ、ぽ....とどんどん顔が赤くなっていくのが分かる。
どう、しよう.....?
私、きっと今変な顔になっちゃってる.....。
だって、嬉しくて...これ以上ないくらいに嬉しくて....でも照れくさくて....おかしくなっちゃいそうだから。
住宅街の街灯が2人をほのかに照らす。
さっきまでのイルミネーションとは違ってずいぶんと質素なライトアップ。
でも、これがいい。
空からゆっくりと落ちてくる雪もなんだか暖かく感じる。
そんな素敵な空間の中で、2人は幸せに浸っていた。
思いもよらぬ怒涛の褒め倒しに軽いパニックを起こすこはね。
素直に嬉しいと言えるほどの余裕はない。
自分でも分かるくらい顔がゆでだこの様に熱くて、今すぐその場から離れたかった...のだが。
先ほど彼に抱きしめられてから、かれこれずっとこの同じ状態のまま。
確かに先ほどまでは、あったかくて、嬉しくて、幸せな気持ちに浸っていたのだが....
ただ、今すぐ家に逃げ帰りたくなってしまったこはねにとってそれはかなりまずい状況へと変わった。
おまけに、いつも優しいはずの冬弥の様子がなんだかおかしいような....
こんな.....逃げられない状況で.....
恥ずかしくて耐えられないよ......!!
もう.......もう...........!!
その日の晩
門限を約束より大幅にオーバーした2人は両親からきっちりとお叱りを受けたらしい。






















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。