あたし、CodeName:WOLFは物陰に身を潜め、▲▲宝石店を睨んだ。
なんだか妙に緊張する。
さっき『FISH』が送ってきたメッセージを思い出す。
…でも、あいつのことだから、ちゃんと念入りに調べたんだろうな。
となると、罠がある確率が高い。あたしは昼間のことを思い出して、気を引き締めた。
そんなメッセージが、今日の昼送られてきた。
…あれ?今深夜の3時だから昨日の昼って言えばいいの?まぁ、いっか。
探偵さぁーもんとは、今まで犯人を取り逃したことのない、とにかくめちゃめちゃつよつよな探偵だったはずだ。
どうやら色々調べてくれるみたいだ。頼りになる友人を持ったなぁ。
少し間が空いてから、返信が来る。
あたしはそれだけ送ると、犯行時刻まで適当に時間を潰すことにした。
深夜3時前。
『FISH』からメッセージが届く。
あたしが黒猫の幹部たちが開発したアイテム・転移シートをポシェットから出して広げると、魔法陣っぽいものが浮かび上がり、カードが送られてくる。
身構えていたが、結構シンプルな罠だ。あたしは筒抜けの情報を見てんふふっと笑った。
時刻は2:59。あと一分で犯行開始だ。あたしは偉いから時間はちゃんと守るのだ。
あたしは3時になると同時に、物陰から飛び出した。
警備員はいない。罠に完全に頼っているようだ。
あたしは入り口に駆け寄り、何も知らないふりをして通ろうとする。直後、透明な糸を見てあっと驚いたような演技をした。へなちょこ演技でも、フリってのは大事だ。遠目にみればそんな違和感ないでしょ。
あたしは観察するふりをしてカード挿入口を探す。確か端っこの…あ、ここだ。
でも、カードを出そうとポシェットに手を入れたところで、あたしは気づいてしまった。
どうやらカードをさっきまでいた物陰においてきてしまったらしい。このままではカードを使って入れない。
と言っても、取りに戻るのは良くない。警察関係者がどこに潜んでいるかわからないので、不審に思われる確率がある。カードなしでなんとかするしかない。
肝心なところでやらかすクセは治らないのだろうか。
透明な糸を睨みながら、うーんと考えてみる。
…あ、そうだ。
あたしはポシェットから石ころを取り出して投げる。見事、糸に引っかかった。
シュッ!!!
その瞬間、ものすごいスピードでナイフが飛んできた。ナイフは何にも当たらず壁に突き刺さる。こりゃあ、見事に引っかかっていれば避けられるわけがない。
それにしても、石ころを投げることで誤作動させて機能停止させるとは、なかなか頭がいいんじゃないかな?あれ、もしかしてあたし天才になっちゃう?
しっかり石ころをもう一個投げて2回目以降は作動しないことを確かめてから、あたしは侵入する。それにしても繊細で透明な糸だ。注意されていなければ気づかなかったと思う。『FISH』には感謝しなきゃ。
あたしは入ったところでタイルをよーく観察する。あたしの視力にかかれば凹凸を見分けるなど簡単なことだ。
…いや、差、ちっさ!1mmもないんじゃない?
高さの差の小ささに驚きながら、飛び石のようにへこんでいるところを選んで歩く。
解除機っぽいものを見つけた。あたしはめっちゃ頑張って暗記してきたコードを入力する。
何度も確認してから決定ボタンを押した。カチャッと小さな音がする。落とし穴が作動しないということは、コードはあっていたのだろう。
そのあとはタイルは気にせず、淡く光る指輪めがけて歩く。よく見ると、指輪の周りのタイルは全て罠になっているようだった。こりゃあロックを解除しないと取れるわけがない。
あたしは指輪が入っているガラスケースからちょっと離れて、ポシェットからペンを取り出した。実はこれ、ペンに見せかけた小型銃。小さいので5発分くらいしか詰められないけど、怪しまれずに攻撃したい時に重用される銃だ。
あたしはペン先をガラスケースに向け、ノックした。勢いよく弾が発射される。
ガラスがパリンっと割れると同時、弾を触れたものと認識したようでレーザーが指輪の周りに張り巡らされる。あたしの立ち位置も少し危なくて、よっと身を避けた。
…これで、指輪を取れる。
あたしはレーザーが消えるのを待って、指輪へ手を伸ばす。
…と。
突然背後に存在を感じ、あたしは咄嗟に身を捩った。ナイフがあたしを掠めて壁に刺さる。
振り返ると、そこには探偵さぁーもんがいた。
そう言って、彼は不敵な笑みを浮かべる。
今まで犯人を取り逃したことのない、つよつよな人。
…面白いじゃん!あたしだってつよつよなんだから!
本当はこの人と一勝負行きたいところだが、あまり時間をかけるわけにもいかない。あたしは指輪を掴む…と。
指に、電流が走った。かなり強い電流のようで、全身がしびれる。
あたしも、まさか商品自体に罠が仕掛けてあるとは思いもしなかった。
…本気だ。本気で、あたしを捕まえようとしてる。
強がって見せたが、さぁーもんにはお見通しのようだ。
…待って。さぁーもんって長いし呼びにくい。あたし、そんな滑舌よくないんだ。せっかくだし、あだ名つけちゃお。…うーん…「さも」とかどう?うん、我ながら名案。
勝手に脳内であだ名をつけているうちに、さもは短いナイフをたくさん投げて来る。いつものあたしならこの程度の攻撃、どうってことないのに、電流のせいで動きが鈍くなってしまう。ナイフがふくらはぎを掠め、少しの痛みがした。見れば、細い傷口から血が出ている。
さもが馬鹿にするように笑う。人は煽られると余計怒る。怒れば、少し動きが荒くなる。彼はそれを利用しているようだ。
…残念でした。あたしには通用しないよ?
こういうタイプはむやみに会話しないのが得策だ。相手を観察し、一瞬の隙をついて指輪を取る。即座に塗ってあるものを拭いた。これでこれ以上電流が流れることはなくなるはず。
軽く手を振ると、少し電気が抜けた気がする。この分なら、動き回っているうちに電気も抜けそうだ。…多分。
別に、あたしにはこいつを殺す義務はない。殺す必要もないと思う。逃げればいいだけなのだ。だって、もう指輪はあたしの中指にはめているのだから。
あたしはさっさと踵を返す。
残念ながら、待てと言われて待つほど正直な心は持ち合わせていない。あたしは宝石店の2階へ繋がる階段を駆け上がる。
あたしは脳内でルートを思い出しながら五段飛ばしで階段を駆け上がるーーーーと。
…前方に、人影!?
力技でなんとかなる警察だったらいいなぁ、と思いながら、あたしは素早くナイフを数本人影に向かって投げる。
しかし、人影は軽々とそれをかわしてしまった。
自分で言うのもなんだが、そんなことができるのは、近頃ここらの界隈でウワサの人たちしかいない。
何かがわかりそうだと思った時、人影はあたしに向けてカードを何枚か投げてくる。
…あのカード、見た目はただのカードだけどナイフ並みの切れ味を持つやつじゃん…!
あれは結構高額だ。そんなのを何枚も持ってるなんて…あいつ…何者!?
驚いたからか、少し判断が鈍った。右にステップしてかわすが、髪の毛の先に少しカードが当たってしまう。髪の毛がチリっと飛び散った。
人影は桃色の髪を揺らして、ふふっと笑った。
【次回予告】
あたしは何も答えずに、無言でナイフを投げる。
「…流石に2対1は不利すぎるのだ…!!」
…もうこれで終わりなのだ。
__〈- No.4 最後まで諦めずに -〉2024/09/02 17:00投稿__
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。