そんな言葉に、俺はえっ、と思わず声を出してしまった。
豈間警部が頭を下げてお願いしてくる。だが、俺の懸念点はそこではないのだ。
…怪盗ウルフを捕まえるのは、「CodeName:FISH」としての俺にとって、仲間を捕まえることに他ならない。しかし、ここで断ったり、怪盗ウルフ…『WOLF』を逃してしまえば「名探偵さぁーもん」という名前に傷がつくことになる。探偵業と怪盗業、どちらかを優先するのは避けたい。ななっし〜も『WOLF』も…俺の大事な"仲間"だから。
しかし、ななっし〜もそう言ってくる。もう受けない手はなさそうだ。
俺は軽く頷きながら、必死に考えを巡らせる。どうやったら依頼を達成し、かつ、『WOLF』を助けられるか。
後ろに立つ鳥間巡査からそう声をかけられる。俺は笑顔で頷きながら、じゃあ自分で捕まえりゃいいじゃん、と心の中で言い返しておいた。
そう言って警部は宝石店の設計図を取り出す。巡査が後ろでメモを構えたのがわかった。おそらく、ななっし〜も俺の後ろでメモを取っているだろう。
話し合いの結果、あまり高価ではない罠をたくさん設置することにした。『WOLF』はポンコツなので、数を仕掛けておけばハマるだろう、という見解だ。
こうして、警部たちは探偵事務所を後にした。
そう言ってななっし〜は台所へ駆けていった。時計を見れば、もう昼の11時。思ったより話し込んでいたようだ。
昼食をとった後は、各々作業の時間とする。俺は情報収集に見せかけて、ボスからの連絡を確認したり、『WOLF』を助ける方法を考えたりしていた。
正直失敗するよう仕向けるのは心苦しいが、『WOLF』を助けるのと天秤にかけるようなものでもない。
俺は、自分も『WOLF』も失敗しないようにする"計画"を立て始めた。
深夜2時。俺たちはあれから3時くらいに軽食を食べ、仮眠をとった。そういえば今日は1.5食くらいしかとっていないので少しお腹が空いている。
この場にいるのは俺とななっし〜、豈間警部に、宝石店の店長だけだ。鳥間巡査は今はお留守番らしい。捕まえる時にパトカーに乗ってくるようだ。
入り口のところに、早速罠があった。よく見れば透明の糸がある。これに触れると、刃物が発射されて首に突き刺さるらしい。初手からかなり鬼畜だ。
普通犯人に危害を加えてはいけないが、WOLFは生半可な攻撃だけだとすぐ回復する。生きられるかどうかの致命傷を与えなければいけないそうだ。
端にある解除装置に警察用のカードを入れたら開くらしい。コードよりよっぽど安全だ。ちなみに、俺はこれの簡易版を持っているので、『WOLF』にカードを渡せばこの罠は回避できると思っている。
中の床はタイルだ。よく見ると、凹んだり出っ張ったりしている。
本当にこれ安かったの?と聞きたくなるが、警察業界ではこれは普通の罠なのだ。恐ろしい。
これがたくさんあるタイルのうち3割ほどに仕込まれているらしい。よく床を観察しなければ気づくまい。
ちなみに、一帯がこの罠タイルでできている理不尽ゾーンもあるそうだ。それが例の「藍玉の指輪」の周りである。
この罠の解除方法はコード入力だ。端にある小さな入力機に10桁のコードを入力し、合っていれば停止し、間違っていればその場で落とし穴が反応して警報が鳴るそうだ。なかなかの鬼畜仕様である。
指輪は透明のガラスケースの中に入っていた。解除方法はなく、警察のみが持っている手袋をはめていたら反応しないらしい。
豈間警部が敬礼する。俺は軽く頷いて答えた。
俺たちは物陰に隠れ、怪盗ウルフの…『WOLF』の到着を待つ。
スマホを見る。時刻は午前3時になろうとしていた。
ポップアップ通知で『WOLF』から「了解!任せろなのだ!」とメッセージがきているのがわかる。
俺はこっそり持ってきた怪盗グッズを使って、カードを彼女の元へ転送する。
…俺ができることはやった。あとは、彼女次第。

【次回予告】
(…ここか)
<もっちろん。あたしに任せるのだ!>
(あたしを侮ってると痛い目に遭うのだ〜!)
__〈- No.3 宝石店へ、いざ侵入! -〉2024/08/31 17:00投稿__
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【さぁーもんさんお誕生日記念イラスト】



















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。