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大ちゃんが部屋を出ていく寸前に言った、
「あなた、どうか俺を恨まんとってな。」
という言葉の意味が分からなくてひたすら悩んでいると、部屋のドアがばしばしと叩かれた。
また大ちゃんか。
なんて思って泣いた顔のままドアを開けると、予想外の人物がいた。
『駿佑…』
彼は私の目を見て離さない。
何も言わず、ひたすら見つめてくる。
暫く私はその瞳から逃げられなくて、やっと気づいたけど、駿佑、変装してないじゃん。
急いで駿佑の手を引っ張って部屋に入れると、彼は後ろから私を抱きしめた。
久しぶりに感じる駿佑の温もり、匂い、吐息。
全てが心地よくて、やっぱり私には駿佑しかいないと思ってしまう。
というかいつまで抱きしめられているんだろう。
そう思っていると駿佑はゆっくりと手を離して私に向き合った。
駿佑「あなた、俺は愛してんで。」
そして次は正面から私を抱きしめた。
彼があなたと呼び捨てにする時、関西弁にする時は、すごく余裕がない時。
つまり、今ってこと…?
本当は " 私も愛してる " と言い返したいけれど、それじゃ家を出た意味が無くなってしまう。
すると駿佑は何も言葉を発しない私から離れてソファーに座った。
そして自分の隣をポンポンと叩く。
『 … 』
駿佑「…早く来て。」
隣に座れということか。
理解した私はおずおずと駿佑の隣に座った。
それと同時に駿佑は私の顔を両手で包み、自分の顔と向き合わせた。
顔は少し怒っても見えるし、寂しそうにも見える。
でもやっぱりクマが凄いな…
少し駿佑の顔を観察していると、形のいいプルっとした唇が開いた。
駿佑「西畑さんから全部聞いた…」
ああ、大ちゃんの
「あなた、どうか俺を恨まんとってな。」
とはそういうことか。
とりあえず謝らないとだよね。
『駿佑、1人で判断してごめんなさい。』
謝っても謝りきれないけど。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。