第15話

第十二話
121
2021/10/27 22:49
コツコツ、と辺りが真っ暗な暗闇の中、一人の眼鏡を掛けた男が歩いてた。
男––––稀咲鉄太は今日の集会で出会った灰谷あなたことを考えてた。


––––あの女はドラケンを消すのに役に立つな
そういえば、半間はあの女と知り合いだったな


武道が危惧して通り、稀咲はあなたに目を付けていた。

だが、それは大きな間違いだった。
大切な女を危険に晒すことで彼らの逆鱗に触れ、内に眠る危険な野獣を呼び覚ます要因となる。
勿論、稀咲は彼らがどれだけあなたを大切に思ってるのかを知らない。

思いは強ければ強い程、危険な衝動を生み出す。
大切な存在を危険に晒す存在を排除することだって厭わない。

真っ暗な暗闇の中、背後から忍び寄る影に稀咲は気付かなかった。
綺咲
綺咲
ん…っ?
ふと、目が覚めた稀咲は辺りを見渡す。

そこは寂れた倉庫のような場所で、居るのは稀咲だけ。
身体を起き上がらせようとして、鈍い痛みが走る後頭部と身体。

稀咲はそこで先程、自分の身に起きたことを思い出す。


––––そうだ、確か、誰かに背後から後頭部を殴られ、気絶させられたんだ


一体何処の誰がこんなことをしたのか。
恐らく、此処に連れて来たのも自分に襲い掛かった者だろう。
綺咲
綺咲
何処の誰がこんなことをしたのか分からないが、只で済むと思うなよ
蘭
ふは、今の聞いたかー?竜胆ー、ドラケンー
竜胆
竜胆
自分の今の状況が分かってねぇのかよ、コイツ
綺咲
綺咲
!?
誰も居なかったハズの倉庫に2人分の声が響き渡り、稀咲は痛む身体を叱咤して声のした方を振り返る。

そこに居たのはあなたと一緒に集会に来てた灰谷兄弟と堅だった。

三つ編みの方が兄の蘭で、口元は笑ってるのにその薄紫の瞳は全く笑ってない。
眼鏡の方が弟の竜胆で、こっちは少しも笑うことなく薄紫の瞳を鋭くさせて睨み付けてきて…
堅はなんの感情も読み取れない無表情で見下ろしてくる。
綺咲
綺咲
ドラケン、これは一体どういうことなんだ?
龍宮寺
龍宮寺
あ?それはテメェが一番分かってんじゃねぇのか?
綺咲
綺咲
どういうことだ
龍宮寺
龍宮寺
テメェがあなたに目を付けて殺すかもしれねぇってあるヤツに聞いてな
綺咲
綺咲
!?
竜胆
竜胆
あなたは俺たちの大切なヤツだ。そんなアイツを消そうとする存在はさっさと排除しねぇといけねぇからな
蘭
恨むなら椿姫に目を付けた自分を恨めなー?俺たちはただ危険な芽を摘むだけだから

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