第9話

第三章(響目線) ばらばら②
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2025/02/14 03:00 更新
神崎 紬
神崎 紬
すごい晴れたね〜!
運動会日和だ〜
朗らかな紬の声が、私の心をますます奮い立たせてくれる。

今日は四季にいいところ見せて、軽音部の繁栄を目当てに来たも同然!

本当に晴れてよかったところ、つくづく思う。

放送部員
あー、あー、マイクテスト、マイクテスト
本日は晴天なり!
                        ♦︎  ♦︎  ♦︎
放送部員
さぁ始まりました、体育祭!
最初はラジオ体操、なんとこちらも加点対象!
それでは、ラジオ体操〜
小鳥遊 響
小鳥遊 響
加点対象!
いいねぇ、本気出しちゃうぞ〜
私も体が柔らかい方ではあるので、加点目指して、曲に合わせて軽やかに行う。

あんまりしなやかにやり過ぎても駄目らしいし…

小鳥遊 響
小鳥遊 響
(…?
湊と四季がなんか話してる?
まぁ……いっか、しっかりやんなきゃ…)
とても短い時間で体操が終わり、なんだか物足りないような感じもしたが、次の競技に気持ちを切り替えなければ。

                    ♦︎ ♦︎ ♦︎

放送部員
さぁこれから始まります競技は一年生障害物競走!
200mの短さで繰り広げられる困難に立ち向かえるかッ!

神崎 紬
神崎 紬
四季くんの出番だー!
相変わらず気合い入ってんねぇ、放送部員…


小鳥遊 響
小鳥遊 響
なんかめんどくさそうな女の子に絡まれてる〜……
神崎 紬
神崎 紬
んえ、ほんとだ〜! 
響嫉妬しちゃうねぇ
小鳥遊 響
小鳥遊 響
は、!? 
ないない…ただの友達だし……
神崎 紬
神崎 紬
あはは、そかー

そんな話をしていると、大きな音が聞こえた。

驚いて振り返ると、どうやら四季が一番に競技の風船割りをしているようだ。

小鳥遊 響
小鳥遊 響
すごい…… 
1等かな…!

神崎 紬
神崎 紬
えーっと……次は〜…
うーわ…ぐるぐるバットじゃん!?
私めっちゃ嫌いだったな〜…
そうこう紬が言っている内に四季はバットを手にし、回り始める

何回か回り終えた後、四季は立ち上がれずに地べたに座り込んでしまった

このままでは、一位の座が…四季が、……

小鳥遊 響
小鳥遊 響
四季〜!!!!
がんばれー!
気づいたら大声をだして四季を応援していた

驚いて顔を上げた四季がこちらを見る

顔面蒼白としていた彼の顔が、みるみる内にほころんでいく

そして、立ち上がった

神崎 紬
神崎 紬
響、やるじゃん
小鳥遊 響
小鳥遊 響
なんでだろ、こんな大声出るんだ…私
いつもは軽音部として活動している時にしか基本大声が出ない

なのに、なぜだか今回は違った

四季のためにと思って大声を出した。
でもどこかに、…私の我儘も含まれているのかもしれない

何故?

頭の中を沢山の疑問が駆け巡る

そこから深く考えていたのか、気づいたら教室の椅子に座り、自分たちの出番が来るまで待機していた

四季の優勝を知ったのは、後々の紬の話からだった

                      ♦︎ ♦︎ ♦︎

また気づけば、もうリレーのスタートラインに立っていた

はっと我に帰った私は、手や足を軽く振って、準備体操をする

あとは先生のピストルが響くだけ

今日は高校生活最後の体育祭だ

決して後悔なんてしたくない。
前日までの雨で、校庭の地面は湿ってこそいるが、そう大したしたことはないだろう

靴紐良し、呼吸良し、体のコンディション良し。
今日も習慣化されたチェックをして、白線で待機をする

先生が、「よーい」と声をかける

足を後方に引いて、息をすぅっと吸い込む

軽いピストルの音が鳴り響く

足で地面を目いっぱいに蹴り上げて駆け出す

よし…今のところ一位のようだ

2位との距離もかなりあるから、このまま行けば一着でゴールする

ゴールテープだけをみて常に走る。
あと少し…あと100m……

小鳥遊 響
小鳥遊 響
っ…、!
その一瞬で体が後ろに引いた。
誰かに引っ張られたと思うほどだ

膝の辺りに強い痛みを覚える

小鳥遊 響
小鳥遊 響
(あぁ…もう駄目だ……これじゃ…一位には…)
そう思った時から私はもう諦めていた

だから私は、ただただその場で泣いた。
体の水が全部抜けてしまうほど、泣いて泣いて、泣きじゃくった

リレーが終了してもなお私は泣き続けるので、とうとう先生達が私を持ち上げて保健室まで連れて行ってくれた

私は、意気地なしな私が大嫌いだ

                   ♦︎ ♦︎ ♦︎

膝が痛いのもそうだが、とにかく気分が乗らない

紬が慰めたり、いろいろしてくれたが、何も私に響かない

神崎 紬
神崎 紬
響、四季くんだよ、
小鳥遊 響
小鳥遊 響
(四季…?)
紬に迎え入れられ、四季が教室に入ってくる

一条 四季
一条 四季
あの、先輩、すごかったです、!
気にすることないと思います
その優しい言葉が、頭に響く

痛い…

小鳥遊 響
小鳥遊 響
そんな言葉、いらない
とっさに口からその言葉が出てしまった

あとからしまったと思った。
が、顔を慌ててあげた頃にはもう四季はいなかった


さっきまで痛くて痛くて仕方なかった膝よりも、今は心の方が痛いと、深く深く後悔した。
もう、遅いのに

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