今日はバレンタインデー前日の休日
響を家に招いてチョコ作りの手伝いをしてもらっている
今日は私の先生として来てもらった響といえば、持参のベースと楽譜を持って、曲のコード練習をしているようだ
勤勉なのはそっちの方だ。
私はろくにキーボードもやらずにバレンタインチョコ作りとは…
違う、これは律のためのチョコだ。
別に無駄な時間とか、一際ない。断じてない
とうとう痺れを切らした私は、響に声をかける
耳につけていたイヤホンを外して、こちらを見る
響がにやりと悪戯っぽく笑う。
こんな笑い方、四季くんにはしないくせに
謎の嫉妬心のようなものが私を襲う
別に響のことを恋愛対象としているわけではなく、こんな響の一面を知らない四季への罪悪感に苛まれているだけだ
響も、いつか四季くんにこんな笑い方するようになるのだろうか…
響への期待感が大きくなっていくのが分かる
というか、私は今律へのチョコを作らなければならないのだった
……まぁとにかくやるしかない、か…
かけている眼鏡を軽く持ち上げ、レシピが書いてあるスマホを覗き込む
レシピに書かれているのは…
「超簡単⭐︎初心者向け、ガトーショコラの作り方」
よくよく考えたら、簡単に作れるお菓子なんかあることはないのだ…
これこそ響様頼りをするしかない……
そう言いながら響がキッチンへ入ってくる
私の手からボウルとヘラを取り上げ、慣れた手つきで混ぜ合わせる
自慢げにドヤ顔をする彼女
よし…律のため…頑張らなければ…!
♦︎ ♦︎ ♦︎
流石に恥ずかしい…
多分顔が赤くなっているのだろう。耳が火照っているのが分かる
嬉しそうに顔を緩ませる律
私の心も安堵の気持ちで一気に緩んだ
チョコはかなり不格好になってしまったが、自分なりに上出来だと思う
あのレシピには書いていなかったが、響の助言でオレンジピールとレモンを少し入れてみた
我ながらおしゃれなカフェで出てくるような感じなのでは…!
律に喜んでもらえた…
ただただその言葉が嬉しくて、私も律と一緒に微笑んだ
これからも、こうやって笑い合える日がずっと続きますように。
そう私は深く願った















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。